第2節 再びの掃除

「めんどくさい!」

 掃除が終わったと思ったら、燃えた学校の後始末をすることになるなんて最悪だ。


ガレキ(ほとんど木片)重いし、アミはうるさいし掃除の時より難易度が上がってる。

「どうしたんだよ、歌川―。あと少しだ、がんばろうぜ」どの口が言ってるんだ。アミががんばれば、もっと楽になってる!


「もう少しだけ、がんばるかぁ」

 背伸びをして、深呼吸する。


「お待たせ」

 如月がセシルを連れてきた。2人は手を繋いでいる。

 ここまで、仲良くなるとは思ってもいなかった。やっぱり、火事の件でみんな私達との関係が変わった気がする。


──それにしても、百合はいいなぁ。

「なに、ニヤニヤしてんの気持ち悪い」

「き、気持ち悪いってひどい!」

 私はただ百合を見て、華やかな気持ちになっていただけです。


「てか、なんでセシル連れてきたの?」

「買い出し終わって、暇そうにしてたのとやってみたいことがあるんだよね」

「はい、皆さん離れてください」

 セシルはガレキの前に立ち、手をかざした。


「セシルは風の魔法使えるようになったらしいよ」

如月が、笑顔で言った。

「誰から教わったの?」

「クロノさん」

「それは期待できるねー」


クロノさんの魔法を見たことが、何度かあるけどどれも迫力がすごかった。魔法といったら、大迫力ダイナミックというのが、クロノさんの魔法がそれに当てはまっていた。


「いきます! 皆さん離れてください」

 セシルが実際に出した風は、まったくもってただの風で、ガレキが動いた気配すらない。


「まだやってないよね?」

 私が確認すると、セシルの顔は真っ赤になっていた。


 どれくらい赤いか例えるなら、今隣にいる如月の髪以上に赤いし、手を振られて振り返したら、後ろの人に手を振っていたという、事実を知ったときの私の顔より赤い。


「そ、そういうこともあるよね」

「何も言わないでください」

「皆さん離れてください!」


 アミがセシルが、魔法を使うときのポーズをマネしている。

 声のトーンから、表情まで似せてきてるから、地味にクオリティが高くて笑いそうになるのをこらえる。


「ッ!!!」

 セシルは、アミの足を蹴った。


「痛い!!」

「セシルにもできないことあるんだ」

 如月は驚いた表情で言った。

 確かに、セシルは手先が器用だから、なんでもできそうなイメージはある。家事だって、髪を整えるのだってできるから、意外だった。


「自分にだって、できないこと、苦手なことくらいありますよ」

「例えば?」

 アミが蹴られた左足をさすりながら聞いた。


「と、友達作り…です」

 可愛い~~~~!! 5億円あげちゃいたい(もってないし、ここでは無価値だけど)。


「ほんと可愛いなぁ」

 如月がセシルの頭をでる。

 私も、アミも一緒に撫でる。


「ちょっと、やめてください!」

「お、いたいた」


 男の人の声がした。振り向くと、3人組の私達と同じくらいの男の子だ。ひとりは金髪でいかにもチャラそう。もうひとりは、背が高くて、ヒョロヒョロしてる。もうひとりは、大人しそうで、民族衣装をしっかり着こなしていて清潔感がある。


「あ? なんか用かよ」

 アミががんを飛ばすと、男の子達は怖気おじけづいた。

 真ん中にいた、3人の中で1番誠実せいじつそうな子が話す。


「その、よ、良かったら俺らと遊びませんか」


 かみながらも、言った言葉に少し驚いた。

 まさか、私の人生において、ナンパされるとは。隠れオタクで、なるべく目立たないように学校生活を送ってきた、この私が。

 如月は少し恥ずかしそうに、スカートのはしをいじっている。


「は? なんで」

 アミは機嫌きげんがさらに、悪くなった。


「ちょっとアミ。失礼じゃない」

「こういう奴らには、こういう態度のほうがいいんだよ」

 コソコソと、如月とアミは2人で話す。

 アミは、そこまで男嫌いじゃないけど、こういうナンパとかには、塩対応するタイプだったと思う。


「か…」

「か?」


 男の子達は、目をキラキラさせて言った。

「カッコイイです、アミさん!」

「え?」


 私達は、黙った。なにせナンパだと、思ったら全然違うのだから。心のそこから、尊敬の眼差しを向けていると、彼らの様子からわかった。


「そうか、そうか」

 アミは鼻が高くなっている(物理的には、高くなってないけど。漫画だったら、高くなってそう)。


「待って、待って。こいつが? このゴリラが?」

 如月は、私とアミの間をぬって、前に出てきた。


「ゴリラじゃねだろ、セクシー女優だ」

 セクシーじゃないでしょ、と如月は言って話すを続ける。

「ケンカぱやいし、口使い荒いんだよ。どこが? かっこいいの。かっこいいっていうと、セシルみたいな女の子じゃない」

 セシルは、確かにかっこいいに当てはまると思う。仕事は丁寧ていねいで、速いし、物腰は柔らかい。でも、私達女子にとってはだろうなぁ。


「ケンカ強くて、男っぽいのがいいんっすよ」

 チャラそうな子が言った。鼻息を荒立てている。

「デロル倒したって、聞いた時俺興奮こうふんしちゃいましたもん。魔法を使わないで、強者兵士までボッコボコにしたらしいじゃないっすか」


「おうおうおう!よくわかってんな。兄弟」

 アミは、男の子と肩を組んで、騒いでる。

 髪がショートになっているから、男の子と間違えそうだ。


「ってことで、兄弟。うちらの掃除手伝うよな」

「え?」

 男の子達は、さっきまでと打って変わって動きを止めて、戸惑っている。

「手伝うよな?」

「「「はい…」」」

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