第2章 女子高校生とマタステイシス

第1節 目的

歌川視点



「アミ!如月きさら!」


 イムル村は変わってしまった。

 皆で買い物に行った市場は、れ果てて民家や食事処しょくじどころは炎が燃え移っている。

セシルと一緒に、歩いた山への道も炎、クレアくんと出会った河にも炎。村の全てが炎に包まれてしまったのかもしれない。


 アミと如月の居場所がわからない。私は無我夢中むがむちゅうで走るしかなかった。3年近く一緒に過ごした友人が、死ぬかもしれない。馴染なじみのないこの世界で。


「いたぞ!」


 部族の男が後ろから走ってきている。

──やばい。

 ここがどこかもわからないけど、必死に逃げる。

 普段通りの村だったら逃げる場所はわかる。だけど、今は違う。村が大きく変わってしまったからだ。


「捕まえた!」

 私の腕を強く掴み、部族の男は笑った。

「離して」

「俺らは別にお前らを殺すつもりはない! 落ち着け」

「だとしても」


「離してやれ」


 私が「この村を燃やすのは許せない」、と言おうとしたらどこかからか、声が聞こえた。

 男は私の腕を掴むのをやめて、前を歩き声の主かもしれないマントを羽織った女性の隣ついた。


「アミ!」

 女の人はアミを片手に引きづっていた。アミは傷だらけで、殴られたあとが特に酷かった。

 女の人は、アミを私に向かって投げた。


「その子を手当してやってやれ」

「目的はなに?村を燃やすことが目的なの?」

「目的か、この世界を治すことかな」

──治すってどういうこと。


「おい、待てよ」

 アミが起き上がろうとしながら、声を出す。


「無理しないで」

 アミの体を支える。アミの体はふるえている。起き上がることすら辛いのかもしれない。

「またいつか会おう」

 女の人と男は一緒にどこかに歩き始めた。炎の熱気で姿がわからなくなってくる。


 ──なんで、こんなことになったの。

 こうなる前までの平穏へいおんな日常を思い出す。

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