第21節 乱闘
アミ視点
体中が痛い。さっきいた場所から10メートル近く飛ばされてるな。目の前にある木が、3、4本折れている。うちを支えている木も表面がへこんでいる。
──なんて威力だよ、少年漫画じゃあるまいし。こんな世界に来ている時点でなんとも言えないけど。
さっきいた場所へ戻っていくと、男達の話し声が聞こえる。
「デロル様、部族の女が生きているか確認しにいきましょうか」
「いえ、結構です。風の魔法をあんな至近距離で当たったので死んでいると思います」
「まだ死んでねぇし」
大声で割りこむ。
大声出すと胸らへんが痛いな。
「よく生きてますね。体が丈夫なことで」
「あばらがたぶん折れてると思うけどな」
折れたことないから感覚でしかわかんないけど(基本折れるのは腕か足だから)。
4人の兵士がデロルより前に出た。
「デロル様、こんなメスの部族相手に貴方様の魔法を使う必要はこれ以上ないですよ」
あごひげをたくさん生やしたオッサンが話す。
「おいおい、こんな女の子相手に大勢で攻めるのは可哀想だから順番に行こうぜ」
顔が傷だらけの男が話す。
「いいですね、倒した奴はあの女でお楽しみできるってことにしましょう」
こいつがこの中で1番若そうだな。
村があると思う場所を眺めると、すでに火がなくなっているのがわかった。
「勝手にルール決めるのはいいけど、さっさとかかってこいよ。チンカス共」
人差し指をクイクイ、と前後に動かして煽る。
兵士達が大声を出して怒る。中には剣を抜いて今にもうちに
「ならば、この私がその挑発買わせてもらおう」
いかにもお偉いさんって感じのオジサンがうちの前に出てきた。
「アミはいつでも準備オッケーだよ」
屈伸をしたり、腕を伸ばしたりして準備体操をして相手が来るのを待つ。
お偉いさんは剣を地べたに投げる。
「貴殿が剣を使わぬなら、私も剣を使わず進ぜおう」
「オジサン優しいー」
「では、参る」
お偉いさんがうちに向かって来る。
「それじゃあ、よろしくお願いします」
礼をして、お偉いさんの動きを見る、今のところはただ歩いているだけだった。でも、常に互いが正面に向き合わないように歩いている。
──相手も恐らくこちらの動きを見ているのだろうな。こいつ相当戦闘経験あるな。
「部族の少女よ、貴殿は武の心得があるように見えるが」
一定の距離を保ちながら、うちとお偉いさんは歩く。
「習い事程度だけど、あるね」ほとんどケンカでの経験だけど。
「ほう、どれほどか見させてもらおう」
お偉いさんは一定の距離を保って歩くのをやめて、一直線に走り右手からのストレートのパンチを放ってきた。
屈んで、腕を取り一本背負いをする。
「なにぃ!」
「うちのこと、舐めすぎ」
お偉いさんは鼻から鼻血を出して、顔が血だらけになって動かなくなった。たぶん気絶している。
「次は誰」
「クラフィールさんが!」
若い兵士が驚いている。
「こんなか弱い少女にやられるなんて~」
ぶりっ子のポーズと声を出す。
「気色悪い声出すんじゃねぇ」
顔に傷がいっぱいある兵士が、
「ひっど!」
「俺様が相手してやるよ。あんな爺さんじゃこんな女の子にもやられるわな」
「ゼメントさん、俺も加勢しますよ」
若い兵士が剣を握って傷だらけの男と並ぶ。
さすがに2人相手で相手は剣でこっちは拳はキツイかな。
「あ? いらねぇよ」
「ゼメント、私も行こう」
ヒゲのオッサンがゼメントと呼ばれている顔が傷だらけの男と並ぶ。
「ちょっとちょっとお兄さん方? 女の子相手に3人はないんじゃないかな」
「さっきの部族のメスが投げたところを見て確信した。お前は強い」
「だから、部族じゃねーし。日本人だし」
「クラフィールの体重は70キログラム、甲冑とかの重さを加えたら100キログラムは余裕で超える。そんな奴をお前は投げたんだぜ、女の子なわけねぇだろ」
傷だらけの男が注釈をする。
「女の子だわ! おっぱいあるし、ちんちんは生えてないわ」
「どちらにしろ、部族のメスよ。お前は我々で
「さっきからヒゲのオッサンさ。メスメスうるさいな」
「くるか、メス」
ヒゲのオッサンがさっきのうちの真似をして、人差し指をクイクイ前後に曲げたり伸ばす。
「うちの名前は、江藤アミだっつーの! 覚えておけ、ハゲ」
発言が終わったと同時に走りだすと、3人の兵士は剣を抜いてうちに向かって走ってくる。
──まずは、ヒゲのオッサンをぶん殴る。さっきからメスメスうるさいからな。
3人の兵士はうちを取り囲み、そして動き出した。
「まずは、てめえだよ! ヒゲのオッサン!」
「かかってこい! 部族のメス!」
ヒゲのオッサンは剣を横に振る。
それを避け、
「うおおおおお!」
「奇襲になってねぇ、ぞ」
攻撃を避けて、傷だらけの男の懐に入り
2人はだらしない声をあげて、地面に倒れこむ。
若い男は地面に頭を強打したらしく、気絶していた。
「クソ!」
傷だらけの男は立ち上がり、顔を真っ赤にして突進してきた。
「そんな見え見えな、突進じゃダメだし。まだうちをただの女の子だと思っているっしょ」
型を整えて、息を大きく吸って吐く。
傷だらけの男がうちを抱き込もうとしたのと同時に正拳突きをみぞおちに決めると、男は口から唾を吐出しながら、地面に倒れた。
「次はお前だぜ、デロル」
デロルをにらみつける。
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