第14節 火災2
如月視点
学校の中はどこも赤く燃え上がっていて、熱く息苦しかった。
「ナミタちゃん達はどこにいるんだろう」
口元に濡れた布を当ててぼやく。
ナミタちゃんとヨハネちゃん。ナミタちゃんはあたし達を嫌っている子だけど、ヨハネちゃんは全然あたし達を嫌っている様子のない小学3年生くらいの女の子だ。
学校自体部屋がいくつもないから、そんな迷わないと思うけど天井から木が落っこちてたり、炎が壁にどこがどこかわからなかった。
「誰かいる?」
大きな声で呼びかけるが声はせず、ただ何かが燃える音とパラパラと天井から、木の破片の燃えカスが落ちる音、炎の燃える音が聞こえる。
「早く探さないとあたしまで死んじゃう」
とにかく歩いた。燃えた学校の中をうろうろと歩き声をかけたが誰も見つからない。
もしかしたら、もう死んでしまったのではないかと良くない考えをしてしまった。
ここがどこらへんかもわからなかった。もともと方向音痴なところがあるのと、風景が毎回変わるからなおさらわかりずらく、外に出ようにも出れなかった。
「…息が苦しい」
まだ学校の中に入って5分もたっていないと思うのに、濡らした布と服が乾き、肌が焼けるように熱い。
「…誰かいませんか?」
喉から必死にかすれた声を出すが返事がなかった。
ふと右手側の遠くに目を凝らしたら、人の服と手が見えた。そこへ炎の壁と燃えた木片を避けながら行く。
「大丈夫?」、と走ってその場に行くと、そこにあったのはシャツだけだった。
「違う、勘違いした」
大きくため息をついてしまう。
「ニャー」、と声が聞こえた。
こんなところに猫が入りこんでしまっていたのか。声がするところまで歩くと黒い猫が「助けて」と叫ぶみたいに壁に向かって鳴いていた。
「もう大丈夫だよ」猫を抱きかかえて、周りを見る。
「あとは子どもを見つければ、いいだけなのに」
目の前がクラクラとゆれてきた。煙を吸いこみすぎたのかも。
「ヤバいかも」
おぼつかない足取りで歩く。
「誰かいませんか」
叫んでも誰の声もしなかった。
「ここ! ここにいる! 助けて!」
声の聞こえる方角へ向かうと2人の女の子がいた。ナミタちゃんがヨハネちゃんを抱きかかえていた。
「ケガはない?」
「なんでアンタなのよ」
ナミタちゃんはにらんでいる。
「別にいいでしょ。早く出よう」ナミタちゃんに手を伸ばす。
「部族の手なんて借りない」
「こんな時にそんなこと気にする必要ないでしょ」
ナミタちゃんの手を無理やり掴む。
それをナミタちゃんは振りほどく。
「あんたが火をつけたんでしょ」
「違うって」
「信用できない」
「火放ってないし、ここまで助けに来たのが証拠!」
頭がクラクラしてきた。
ナミタちゃんをにらむと、にらみ返された。
「ナミタちゃん…」ヨハネちゃんが話す。
「ヨハネ、無理しちゃダメ」
「わたしを置いて早く逃げて、ナミタちゃんまで死んじゃう」
ヨハネちゃんはあたしを見て微笑む。
「ナミタちゃんをお願い…。おねえちゃん」
「ヨハネ!」
ナミタちゃんはヨハネちゃんを強く抱きかかえ、泣いている。
ナミタちゃんの肩を触れる。
「触んないで!」
あたしの手を払いのける。
ナミタちゃんの肩をもう一度掴む。
「信用してなくてもいいから! 今はヨハネちゃんを助けるべきでしょ」
ナミタちゃんの目を見つめる。
「わかったわ」
ナミタちゃんはあたしの必死の訴えかけに応じたのか頷いてくれた。
ヨハネちゃんを受け取り、首元に指を当てると脈があった。
「大丈夫、生きてる。早くここから動こう」
ヨハネちゃんを抱きかかえ周囲を見ると、壁が崩れ外に繋がる場があった。
「急ごう、あそこまで走って」ナミタちゃんを先導して走る。
バキバキ、とあたしの頭上から大きな音がし上を見上げると燃えた屋根の破片が落ちてきた。
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