第10節 これから
歌川視点
私達は家の手伝いをして、倉庫の掃除、家に帰って寝るという習慣としていた生活をに終わりが見えてきた。
終わりが見えてきたといってもいらない家具、木、本がなくなり床も
倉庫はにはいらないものがなくなって、広々としていている。昔使っていたらしい本棚や机(クロノさんがコレクションしたけど、一度も使わない良い品物)が、学校として使える段階までになった。
「終わったー!!」
アミが叫ぶのに続いて、みんな大きな声をあげた。
「長かったような短かったような」
如月は学校の床に座りこみながら、疲労していたのが見てわかった。
「やっと、終わったねー」
如月に
「アミがふざけたり、サボったりするのを注意することがなくなると思うとほんと嬉しい」
「うちはいつも真剣にやってました~!」
アミがそれを聞いてはなしにはいりこんでくる。
「…」
「如月ツッコむの、めんどくさくなってるねー」
「皆さんお疲れ様です。もう日が暮れますので家に戻りましょう」
セシルが汗を、首に巻いたタオルで拭う。
倉庫から出て、辺りを見ると日がオレンジ色になっていて、山に隠れていく。遠くの景色も暗くなっていた。
「もうおなか減った」
「私もー」
アミと私は如月に倒れるようにして体を預ける。
「2人ともあたしに寄っかからないでよ。重いんだけど!」
「疲れたんだから仕方ないだろ」
「私もぉ」
「これからだってやることたくさんあるんだからね」
如月は私達の間を通って前に立つ。
「え? もう掃除終わったんだから何もないんじゃ」
「歌川はあまい! 学校には何が必要?」
「先生?」
「そう。先生がいるためには生徒だって必要だし、何が必要かとか色々あるんだから!」
「永遠にやることあるじゃねぇかよ」、とアミがぴえん、ぴえん、と言いながら泣きマネする。
「でも、それらが終わったとしたら何やる?」
「それは、ここを出て元の世界に戻る方法を探す…とか?」
咳払い──。セシルが口元に握り拳を当てて
「今日は掃除が終わった記念として夕ご飯
と、微笑む。
「「やったー!」」
アミと私は顔を見合い、走る。
「ちょっと2人とも!」
「ただいまー」
「おかえり! 待っていたよー!」
私達が帰るとセシルのお父さんが裸エプロンをして玄関に立っていた。
「どんな格好でいるんだよ」
アミが大声で笑う。
「お父さん、帰ってください」
「どこに!? ここ僕の家なんだけど!?」
「おかえりー!」「帰ってきた!」と、リビングから子ども達がやってきた。
子ども達に手を引っ張られるまま、広間に入ると食卓の上にはセシルが言っていたとおり豪勢だった。
「おおー」感嘆の声をあげていると、裸エプロン姿から私服に着替えたセシルのお父さんに「これは学校を作ってくれたお祝いだよ」、と言われた。
「学校を作ってくれてありがとう」
セシルのお父さんが私達の肩に手をのせていく。
「ちょっと感動してきたかも」
如月は涙声になっていた。
「泣いてるのか」、とアミが茶化す。
「うっさい」
私達がやったのは掃除だけだけど、達成感からか私も泣けてきた。
「さて、席について。ナミタとヨハネは?」
クロノさんが子ども達に聞くが全員首を横に振った。
私とセシル、アミ、如月は顔を見合うが首を傾げた。
「困ったね。先に食べるというのも可哀想だし主役の3人にこれからやりたいことを聞いてみようか」
「これからやりたいことですか?」
何も思いつかずそれぞれ顔を見合わす。
「そうだよ、だって学校の掃除してもらったんだから、もうここのお駄賃は払ってもらったってことだからね」
「あたしは元の世界に戻る方法を探したいので、この世界の本とか話を聞いてみようと思います。あ、別にここが嫌ってことじゃないんですけど、家族を心配させていると思うので」
「如月はほんと真面目だな。うちは、うちは…」
「なんにもないのね」、と如月が笑っている。
「いや急に言われると思いつかないな」
アミは指をあごに組み、深く考えている。
「私はここで学校作っただけだと申し訳ないし、手伝いながら、金を集めて旅でもしようかなー」
学校作ってとんずら帰ると、就活のために海外に学校作った大学生みたいで責任感なくて嫌だ。
「アミも私と一緒に行動する?」
「そうするか! 如月はここでお別れだな」
アミは如月に手を振っている。
「だねー。すぐにパッと思いつく如月はそうとう家に帰りたいんだね」
如月は、一瞬悲しい表情をした後、怒ったように話す。
「帰りたいに決まってるじゃない! 久しぶりにゲームだってしたいし」
「ぷぷー、お子ちゃまだなぁ」
「アミ殺す」
如月がアミを追いかけまわしていると、セシルが笑った。
「皆さんは仲が良いんですね」
セシルが私達を見てどこか
「うちらマブダチだしね!」アミが笑顔で答える。
「もちろんセシルも。あとガキ共もな!」
「ありがとうございます」
セシルは頬が赤くなっていた。
「あれ僕は?」
「セシルのお父さんは奴隷」
「アミそれはヤバすぎでしょ」
如月は笑った。それに対して、私も笑った。
「如月それなんのフォローにもなってないよ」
「みんな僕に対しての扱いひどすぎない!?」
「村長いますか」
ドンドン、と玄関の扉を叩きながら若い男性が叫ぶ。
「ちょっとごめんね」
セシルのお父さんが食卓から離れ玄関へ向かう。
「本当かい」セシルのお父さんの大声が聞こえ、走る音を立ててドアをバン、と開いた。
「学校で火事が起きたらしい」
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