ついてない

ろくいち

ついてない

 クマのクマ吉くんは、お友達から、お肉とお魚をもらってウキウキです。

 そこへ、ネコのネコ太くんがやってきました。

「やぁ、ネコ太くん、いいところに。お肉とお魚があるんだ。どちらかいるかい?」

 ネコ太くんは、お魚を食べたいと思いましたが、クマ吉くんが魚好きであることを思い出し、こう答えました。

「じゃあ、僕はお肉でいいよ」

 クマ吉くんは、そう聞いて、ネコ太くんはあまりお腹が空いてないのかな、と感じました。

「せっかくだから、君のお家で食べようよ」

 ネコ太くんの提案で、クマ吉くんのお家に向かいました。


 クマ吉くんは、新しくお家を建てたばかりです。

「いいでしょ。オール電化で、太陽光発電なんだ」

「SDGsってやつかい?」

 ネコ太くんは感心しました。

「そうだね。その一環さ。ネコ太くんはSDGsについてどう思う?」

 ネコ太くんは、急に意見を聞かれて焦りました。

「みんなが考えないといけないことだとは思うよ」

 クマ吉くんは、続きがあるように聞き返しました。

「……けど?」

「けどって?」

「思うけど……何?」

 ネコ太くんは、何を聞かれているのかわかりません。

「僕が、けどって言ったかい?」

「そうか……」

 よくわからない空気のまま、2人でお家の中に入りました。


 クマ吉くんがお家の中をひと通り案内し終えると、ネコ太くんが、尋ねました。

「君のお部屋も見ていいかい?」

 クマ吉くんのお部屋は、壁紙、クッション、小物などハートでいっぱいです。

 ネコ太くんは、男の人でもハートが好きなのは素敵なことだと思いながら、こう尋ねました。

「君がこういうの好きなの?」

 クマ吉くんは、ムッとして、こう答えました。

「僕が好きだと悪いの?」

「悪いだなんて言ってないよ」

 ネコ太くんは、なぜクマ吉さんの機嫌が悪くなったのかわからず、困惑しました。


 ネコ太くんは、時計を見てハッとしました。

「今日は荷物が届くんだった。ごめんね。すぐ戻るから──」

 そう言って、ネコ太くんは一旦お家に帰りました。



 しばらくして、クマ吉くんのお家に、ネコのネコ助くんが訪ねてきました。

「近くを通ったから寄ってみたんだ」

「いらっしゃい。外観はもう見たかい?」

「あぁ。太陽光発電なんだね」

「そうなんだ。君はSDGsについてどう思う?」

 ネコ助くんは、急に意見を聞かれて焦りました。

「みんなが考えないといけないことだと、僕は思うよ」

 クマ吉くんは、そうだよねと頷きました。


 お家の中を見た後、ネコ助くんが、尋ねました。

「君のお部屋も見ていいかい?」

 クマ吉くんは、少しためらいましたが、ネコ助くんを、お部屋に案内しました。

 ネコ助くんは、ハートのお部屋を素敵だと思い、こう尋ねました。

「君もこういうの好きなの?」

 クマ吉くんは、嬉しそうに顔を輝かせて聞き返しました。

「ネコ助くんも、ハートとか好きなの?」

 ネコ助くんにそういった好みはありませんでしたが、こう答えました。

「こういう風に集めてはいないけど、嫌いじゃないよ」


 ネコ助くんは、時計を見てハッとしました。

「もうこんな時間だ。そろそろ帰るね」

「もう帰っちゃうの?」

「帰って夕飯を食べないと。お腹ぺこぺこだ」

「そうだ、お肉とお魚があるんだ。食べていきなよ」

 クマ吉くんは、ネコ太くんがあまり食べたそうにしていなかったことを思い出し、お腹を空かせたネコ助くんに食べてもらった方がいいと考え、ネコ助くんを引き留めました。

「いいのかい?」

「いいよ、どちらを食べたい?」

 ネコ助くんは、お魚を食べたかったのですが、クマ吉くんが魚好きであることを知っていて、こう答えました。

「じゃあ僕はお肉がいいな」

 クマ吉くんは嬉しそうにこう言いました。

「ほんとに? わかった。すぐに準備するよ」



 クマ吉くんとネコ助くんが、楽しく夕飯を食べているところに、ネコ太くんが戻ってきました。

「やぁ。ネコ助くんも来てたんだ。僕も一緒にいただこうかな」

「あ、それなんだけど──」

 クマ吉くんが、軽くごめんごめんと事情を説明し、もうお肉もお魚もないことを知ると、ネコ太くんはガックリと肩を落としました。

「そんなぁ。楽しみに戻ってきたのに……」


 ネコ太くんは、ついてないなぁと思いながら、トボトボとお家に帰って行きました。

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