【No. 028】初めての再会【残酷描写あり/暴力描写あり】

「あはっ……また会えたね」


 胸に深々とナイフを突き刺さされたターゲットが血反吐を吐きながらも、満足そうな笑みを浮かべた。


「僕、君に会えるのが楽しみだったんだ」


「なに?」


 私は闇組織に属する殺し屋だ。

 こんな奴が素性を知っているわけがない。


「君は知らなくても、僕は知ってる。運命の再会さ」


「……ふん」


 しょせん死にゆく者の戯言だ。

 私は誰かに見つかる前にさっさとその場を離れようとした。


「そこの……手紙、読んでほしいな……」


 死への恐怖や私への怒りを向けることなく、最後の力を振り絞り机の上を指さしている。


「……」


 私は珍しく、興味が湧いてしまった。

 手紙を取り、その場から急いで離れた。


―――――――――


「親愛なるナターシャへ」


「……な!」


 手紙の始めから、驚きだ。

 こいつはなぜ私の名前を知っている。

 組織でも名前を知る者は一人たりともいないのに。


「僕は君の未来の夫、アーノルドだよ」


 未来の夫だと?

 下手な口説き文句を遺書に残したもんだな。

 アーノルドだかなんだか知らんが、私は断じて結婚などしないつもりだ。


「信じてもらえないかもしれないけど、僕は未来から来たんだ」


 馬鹿馬鹿しい。

 だが、読み進めてしまう。


「未来の君は重い病気にかかっていてね」


 病気だと?

 私は健康そのものだぞ。


「治すにはとても高額な薬が必要だった。だけど、僕にはそんなお金なかった」


 そりゃ残念だ。

 私は死んでしまうらしい。


「だから、違法な手段を使って過去に戻ることにしたんだ」


 過去に戻る……?

 到底信じられんな。

 仮にそれを信じても、なぜそこまでする?


「過去の出来事はもちろん手にとるようにわかる。僕は巨万の富を築いた」


 だからこそ、私に狙われたんだがな。


「だから、君に狙われたんだ」


「……!」


 手紙に……心を読まれたようだ。

 気に食わない。


「そもそもが違法なんだ、タイムトラベルは」


 それにしても、なぜこいつは狙われていることを知って逃げなかったんだ?


「逃げなかったのは、君の身を案じてさ」


 私を?


「君を雇っている組織は失敗を許さない。病気で死ぬ前に殺されるなんて、避けたかった」


 ……。

 一瞬、殺された同胞の顔が浮かぶ。


「だから、僕はここで君に殺されることにした」


 ……馬鹿な奴だ。


「同封の薬は、いつか必要になるはずだ。取っておいくれ」


 手紙が入っていた封筒には、粉薬も入っていた。


「こんなもの……!」


 必要ない!

 私はそれを掴み、床に叩きつけようとした。

 が、手紙の続きに気づく。


「追伸。君の素直じゃないその姿、とってもかわいいよ。いつまでも、愛している。アーノルドより」

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