【No. 012】この再会は運命!?!?

「やべっ、寝坊した!」


夏休みが開け、新学期を迎えたこの日。俺はいきなり遅刻の危機を迎えていた。

だがしかし、急げばまだギリギリ間に合うはず。そう信じて、高校までの道のりを全力で走る。そうして、曲がり角に差し掛かった時だった。

曲がり角の影から、誰かが俺と同じく全速力で走ってきた。


「うわっ!」

「きゃっ!」


避けようとしたが間に合わす。お互い、声をあげて地面に倒れこむ。

ぶつかったのは、見覚えはないが、同じ高校の制服を着た女子だった。


「ちょっと、どこ見てんの! 気をつけなさいよ!」

「なんだと。それはこっちのセリフだ!」


いきなりの言い種にカチンとくる。確かに今のは俺も悪いが、不注意だったのはそっちだって同じだろ。

さらに文句を言おうとしたが、学校が始まるまで時間がないことを思い出す。こんなやつに構ってる暇はない。


「くそっ!」


結局、それ以上はろくに言葉を交わすこともないまま、一目散に学校へと駆けていった。












「セーフ…………」


なんとか間に合った。くたくたになりながら席につくと、間も無く担任の先生がやってくる。

これから新学期の挨拶が始まるのかと思いきや、こんなことを言い出した。


「今日からこのクラスに新しい仲間が加わることになる。入ってきなさい」


転校生か。

どんなやつかと、教室の入り口に目を向ける。と言っても、そこまで興味があるわけじゃない。そう思っていた。


だが、その転校生の姿を見た瞬間、俺の目は見開かれる。


「あぁーっ! お前は!」


さっき、俺とぶつかったあの女だ! まさかこんな形で再会するなんて。どこのラブコメのフラグだよ!


そう思った。だが────


「あぁーっ! 君は!」

「あぁーっ! あなたは!」

「あぁーっ! もしかして!」


教室中の至るところから、次々と声が挙がる。

なんだ? 何が起きてる? 困惑していると、その中の一人が言った。


「俺のこと覚えてる? 小さい頃一緒に遊んだ幼馴染みだよ」

「覚えてるよ! すごい。こんなところで再会するなんて!」


さらに、別のやつが言った。


「君、夏休みに海で溺れていた子だよね」

「あの時助けてくれたあの人!? すごい、こんなところで再会するなんて!」


さらに、また別のやつも言う。


「インターハイで俺が熱中症になった時、スポーツドリンクをくれた子だよね」

「ああ、あの時の! すごい、こんなところで再会するなんて!」


その後も彼女は、生き別れになった双子の兄妹だの、前世の親友だの、様々なやつらと再会していった。

どれだけ運命の再会してんだよ!


呆然とする中、隣の席のやつが俺に言ってきた。


「お前もさっき声をあげていたよな。何があったんだ?」


いつの間にか他のやつらも、今度はどんな運命の再会ストーリーがあるのかと目を輝かせている。


だが、このタイミングでそれを聞くか?

俺のエピソードなんて、今までのやつらに比べればスケールが小さすぎるぞ。

とはいえ、この空気の中、言わないわけにはいかなかった。


「えっと……今朝学校に来る途中、道でぶつかったんだ」


そのとたん、教室中から落胆のため息が聞こえてきた。


「なんだよ、つまんねー」

「そんなショボい話するなよな」

「再会力たったの5か。ゴミめ」


うるせーっ! 俺だって、どうせならもっとドラマチックな再会がしたかったよ!

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