11/6(日)代表チームの一員として

11月6日(日)17時——。後楽園ドーム


(今度こそ……絶対に打つ!)


今日は強化試合の2試合目。昨日も打てなかったし、前の2打席も三振とファールフライに終わっているのだから、今度こそと力が入る。しかも……


「おい、坂藤!愛しのれにちゃんが結婚して落ち込んでいるのはわかるけどさ、チャンスなんだから、いい加減打ってくれよ!」


「そうだよ!男なら、振ったことを後悔させるくらいの活躍を見せてやれよ!」


……味方であるはずの巻や村豚が笑いながらヤジってくるし。


もちろん、試合前に飛び込んできたニュースになにも思わないわけではないが、今はそれどころではない。今日も打てなければ、「YOUは何しに代表へ?」だ。もちろん、代表ユニのコスプレをしに来たわけでもなければ、推し活を揶揄われる為にここに来たわけでは決してない。


(必ず打つ!)


決意を新たに、左バッターボックスへ入る。


「坂藤、無理しなくてもいいんだぞ。さっさと三振して、トイレで泣いて来いよ」


ハンカチ忘れたのなら貸してやるぞと、今度はラビッツのキャッチャー・北に揶揄われた。おそらく、囁き戦術で動揺を誘っているのだろうが、相手にはしない。


「ボール!」


初球は内角外に外れるボールだった。球種はストレート。そして、次は……


カーン!


内角高めに甘く来た2球目の直球を叩くと、打球はライト前で弾んだ。


「よっしゃ!」


ようやく出たヒット、しかもタイムリーとなる。代表初安打初打点、そして、結婚をお祝いする一打だ。1塁ベース上でホッと胸を撫で下ろして、代表初のお決まりのポーズを決めた。


「お祝いの一打やったら、ホームラン打たなあかんやろ!」


「そうだぞ、坂藤!そんな中途半端だから、おまえは振られたんだ!」


打ったら打ったで、村豚と巻がまた揶揄ってきた。3塁側だけでなく今度は1塁側のベンチまでもが笑いに包まれた。

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