10/21(金)日本シリーズ開幕前夜

10月21日(金)17時——。鳴尾浜球場


「明日の先発は雨柳でいきます」


「こちらは、山元でいきます」


明日からの日本シリーズを前に鳴尾浜球場で行われた監督会議で、お互い予告先発を行うことで合意し、こうしてブレーブスの仲嶋監督と共に記者たちの前で公表した。この予告先発はシリーズでは絶対ではないため、昨年の嵩津は断ったらしいが、今年の場合はあまり隠しても意味がない。


両リーグのエース同士のぶつかり合い以外に、選択肢などないからだ。


「……とはいうものの、伊東と入れ替えるかギリギリまで迷ったけどな」


会議が終わり、監督室に戻ってきたところで、コーチたちを前に本音をぶちまけた。ただ……それをやれば、「逃げた」と関西中で何年も語り草となるだろう。あの334と同じくらいに。特に今年は関西ダービーなのだ。


「そういうことなので、明日がとっても重要になります。お互い投手力が売りのチームなので、初戦を落とせばそのままということも考えられますので、その辺を踏まえて最終確認を行います」


ミスターはそう言って、資料をコーチ、スタッフたちに配った。そこには、明日のスタメンが書かれていた。


「1番ショート仲能、2番ライト鳥田、3番センター遠本……」


ここまでは、スピード重視のオーダーだ。全員左打者だが、明日の山元は右投手だから問題はない。是非とも、得意の足技でかき回してもらいたいものだ。


「4番ファースト原田、5番レフト尾山、6番サード坂藤……」


4番原田は、消去法の結果だ。尾山も坂藤も4番は×だからだ。ただ、ここまで配慮したのだから、二人には必ず打ってもらわなければ困る。


「7番キャッチャー梅山」


雨柳はシーズン中は阪下と組むことが多かったが、明らかに梅山と組んだ方が成績がいいのだ。だから、ここは迷わない。ちなみに阪下は尾山や坂藤がホームランを打った時にそなえて、メダルを制作中だ。特別な物を作ると張り切っていたので、放置している。


「8番セカンド小畑、9番ピッチャー雨柳」


セカンドは今年の弱点だ。だから、右投手ということで小畑をあてることにした。もし左投手なら久万を起用する。正直言ってここにはあまり期待していない。きちんと守ってくれれば、それで構わない。


「あと、1点を巡る勝負になることが予想されるため、早い回でもチャンスと思えば雨柳に代打を出すことも考えられます。終盤の勝ちパターンは、魬、湯川、桐浪と、シーズンと同じですが、ケラケラ、尼子、この二人は状況に応じて登板させるかもしれませんから、そのつもりで」


「承知しました」


ミスターの言葉に豊原コーチが頷いた。これでもう後は明日のシリーズ初戦を迎えるだけだ。


「みんな……あと最大7試合だ。あの開幕直後のズタボロの状況からここまできたんだから、最後は勝って終わろう!そして、日本一のチャンピオンフラッグをこの机の上に置いて、この部屋を島谷新監督に引き渡そうじゃないか!」


「「「はい!!」」」


日本シリーズ第1戦は、ここ鳴尾浜球場で明日18時15分にプレイボールだ——。

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