10/17(月)どうする?御堂筋パレード②

10月17日(月)15時——。大阪市役所


『次のニュースです。神戸市の久本市長は、来る11月3日の午後14時からキャッツの優勝祝賀パレードを行うことを正式に表明しました。コースは神戸太丸から三宮中央通り、フラワーロード東遊園地までという、2003年のパレードと同じで……』


ブチ


「……結局、神戸に先を越されてしまいましたね」


テレビを消した松永市長が肩を落としてそう言った。


ブレーブスとキャッツの優勝パレード。どちらを先にするべきかで、前回の会議では結論が出なかった。そのため、今日の会議では一定の方向性を決めようとしていた矢先に、神戸市が先にパレードの予定を公表したのだ。


「どちらかがCSで敗退してくれれば、悩む必要はなかったのでしょうが……」


「どっちも勝っちゃいましたからね。正直、じゃんけんで決めるしかないのかなと思いましたよ」


同席する幹部からため息交じりの声が聞こえた。自分なんかは、日本シリーズの勝者を先にすればいいのではとさえ思っていた。


だが……それぞれの思いは兎も角として、これで、キャッツのことに関しては、大阪は神戸の後塵を拝すことになった。


「しかし……これで、不毛な議論に結論が出たのでよかったのでは?午後から神戸で、となれば、キャッツのパレードは午前中に行わざるを得ないでしょう」


副市長は励ますようにそう言った。何しろ、11月3日まであと半月程しかないのだ。やらなければならないことは多いのだから、不毛な議論を継続するよりかはこれでよかったのではないかと。


だが……そのとき電話が鳴った。


「市長、吉岡知事から電話が!」


この部屋に集まった幹部たちの間に緊張が走った。


「もしもし……いや、だからそうではなくてですね……」


松永市長は、苦々し気な表情を浮かべて電話の向こうにいる知事に向かってどうやら事情を説明しているようだ。もたもたしてしまった原因を。


「だから、決まりましたよ!3日午前中に……えっ!?本気ですか!」


どうやら、強烈な提案を受けたようだ。市長は驚いている。


「わ、わかりました。それでは、そのように……」


最後は疲れ切った表情で、市長は受話器を置いた。


「如何なさいましたか?」


「……御堂筋に留まらず、大坂城までパレードしろとさ……」


「大坂城までって……」


地図を広げてみる。この市役所から御堂筋を南下して大坂城に行くには……


「本町の交差点から中央通りを東に向かい、そして、上町筋に入って大坂城大手門へ……ですか?」


「そういうことになりますね」


副市長の言葉に、頷いた。地図に赤線を引くと、そのようなルートとなった。


「でも、できるんですか?万博の予算を削るにも限度が……」


「府が協賛してくれると言っている。そこの所は心配ない」


財務担当からの言葉に、市長はそう返して予算上の問題はないと告げた。


「とにかく、兵庫にこれ以上舐められたらダメだそうだ。あちらさんのパレードが霞む程の途轍もない凄いパレードを実現して欲しいとさ……」


松永市長は、疲れ切った顔でため息をつきながらそう言った。

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