10/15(土)動き出す来季の人事

10月15日(土)10時——。大阪


「……おかしい。なぜ、藤村コーチの名がないんだ」


CS突破から一夜明けて、新聞紙面に人事のことが書かれていた。本来であれば、シーズンの終了、つまりキャッツの場合は、日本シリーズが控えているため、その後になるのだが、20日のドラフトに新監督で臨むため、異例ではあるが、今日解禁したようだが……。


「一緒に守乱の責任を取りましょう、といった言葉は嘘だったのか!?」


何度読み返してもその名がないことに、八慈は激高して手に持っていた新聞を引き裂いた。そして、電話を掛ける。もちろん、相手は藤村だ。


「もしもし!これはどういうことだ。一緒に辞めるんじゃなかったのか!?」


『何言ってるんですか。辞めますよ。1軍内野守備走塁コーチは……』


「だが、名前がないぞ。退任するコーチのリストの中には?」


『ああ、それですか。だって、2軍の方に異動になっただけですから、僕の場合は』


「はあ!?」


寝耳に水とはまさにこのこと。一緒に辞めるというから、球団から責任を取るように迫られたときに渋々承諾したのだ。それなのに、これは裏切りだと八慈は憤慨した。


「そもそも、どうしておまえは残留組に入ってるんだ!さては、汚い手を……」


『言いがかりはよしてください。もう切りますよ。まだ眠いんで……』


ガチャリ!


「もしもし?……おい、ふざけんなよ!」


八慈は声を荒げて、再度電話を掛けるが、繋がることはなかった。


呆然とする八慈コーチ。なお、なぜ藤村が残留することになったのかは、人事の闇だった。

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