10/14(金)対バードズ勝利 3-0 【日本シリーズ進出決定】
10月14日(金)21時——。鳴尾浜球場
「ああ……」
フォアボールの判定に思わず唸った。
これで、7回表2OUT満塁で、バッターは3番山駄。あとアウトをひとつ取れば、チェンジだが、ここで繋がれてしまえば、一大事になる。得点は3対0だが、次は村豚だ。
「どうする?代えるか?」
先発のユンケル先生は、ここまで好投してきたものの、球数が100球を超えてコントロールを乱している。下手をすれば、押し出し四球もあり得る。
「この場面で行ける投手はいませんよ。とにかく、信じましょう」
しかし、豊原コーチは交代には否定的であった。ブルペンでは、磐佐と魬が準備をしているようだが、磐佐では火に油を注ぐ様なものだし、魬は1イニングを与えて力を発揮するタイプであるため、このような場面で投げさせるのは博打に近い。
「しかたないな……」
そのため、豊原コーチの言を受け入れて、交代を見送った。すると……
「おい、辛井。守備固めはしろよ」
「守備固め?」
「ライトに鳥田を入れて、ファーストには尾山を回しておけ。見ろ、塁上には足の速い選手ばかりや。こんな所でエラーが出たら、大量失点につながるぞ」
白原さんはそう言った。もし、そんなことになったら、恥ずかしくて今晩飲みに行けなくなるからと。その蛇足には、くすっと笑いそうになるが、言っていることは正しい。次の回は、5番ファースト原田からの攻撃だが、思い切って代えることにした。
カン
そのとき、山駄の放った打球は力なく一二遊間に転がった。
「ま、まずい!」
山駄は足が速い。ユンケル先生のベースカバーが間に合わない。そう思っていると、尾山が2塁に正確に送球して、ランナーをアウトにした。これでチェンジだ。
「よかった……」
思わずホッと息を吐いた。何気ないプレーであるが、此間帰国したマルトだったら、悪送球をしていたかもしれない。だが、これで日本シリーズ進出が見えてきた。そして……
『マウンド上は、桐浪。バッターは、1番塩味。9回表、2OUTランナーなし。足を上げて、第5球を投げた……空振り三振!試合終了!この瞬間、キャッツが8年ぶりに日本シリーズに進出!』
選手たちがマウンド上に集まって輪を作る中、今年二度目の胴上げが始まり宙を舞った。
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