10/11(火)ファイナルステージ前夜
10月11日(火)17時——。鳴尾浜球場
「バードズの先発は、石河か……」
「まあ、1stステージで、緒川、鷹橋、サイニートを使いましたからね。妥当な線でしょう」
夕方のスタッフ会議の冒頭、ミスターが補足するように言った。予告先発はすでに発表されている。こちらはもちろん雨柳だ。
「あのピッチャー、苦手なんだよな。打てそうなのに、なぜか打てない。そして、次は打ってやると思ったら、他のピッチャーに代わっている。しかも、あの遅い球の後だから、速いピッチャーには合わせずらくなる。……初戦の相手としては厄介だな」
「しかし、逃げるわけにはいきませんので、どうするかというところですね。それについて、白原コーチ、ご意見は?」
「そんなん、気合で打つしかないやろ!」
「……聞いたわたしがバカでした」
ミスターが呆れるようにため息をついた。そんなんで打てれば世話ないと。
「それで、白原さん。尾山はどうなんですか?」
この3日の様子なら、場合によっては4番降格を考えなければならない。そう思って訊ねてみると……
「信じたい気持ちもあるけど……やはり5番か6番あたりを打たした方がええやろな」
今度は的確にそう答えてくれた。これで、4番原田、5番尾山、6番坂藤の並びは決まった。
「あとは、村豚対策だが……みなさんは、どうすべきだと思いますか?」
正直言って、後半戦のバードズは、村豚ひとりのチームだ。こいつさえ抑えるか、避ければ、およそ大けがすることは少ないように思える。
「最後の1カ月は、確変が終了しましたから、勝負してもいいのではないかと思います」
豊原コーチは、そう言って逃げることを否定した。しかし、ミスターは真っ向から反対する。
「わたしは、なるべく避けれるなら避けた方がいいかと思います。いつまた目覚めるかわからないわけで……」
「そんな弱腰でどうすんや!」
「そう言いますが、白原さん。うちは打力が弱いんですよ。取られたら簡単に取り返す力がない以上、逃げるが勝ちかと……」
白原さんの言うとおり、弱腰かもしれないが、その言は正しく思った。うちの打線はバードズのような打ち出の小づちのように点を取れる打線ではない。よって、可能な限り、勝負はしない方針を全員で確認した。
「さあ、いよいよ明日からです。その先のことは考えずに、やれることをやりつくしましょう!」
日本シリーズに向けた熱い戦いが始まる。
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