10/10(月)紅白戦3日目
10月10日(月)16時——。鳴尾浜球場
「7回裏、先攻チーム1点リードで、1OUT1、2塁か……。どうします?明後日の試合もありますので、代えますか?」
豊原コーチの進言は確かに的を得てはいた。明後日に控えるCSのことを思えば、たかが紅白戦でセットアッパーの湯川を消耗させる必要はない。だが……首を左右に振った。
「いや……ここは任せて見ましょう。場合によっては、桐浪もいなくなるかもしれませんから、彼の可能性を確かめるためにも」
もし、ここで抑えることができれば、たぶんだが、彼の自信になるはずだ。それは、来季、仮に守護神を任されたとしたら、きっと糧になってくれているはずだ。
そして、打席は原田。しかし、その初球を見事にセンター前に運び、これで満塁……。
「打席は尾山か。今日はいいとこなしだが、さあどうなるか……」
チャンスに凡退に、失点につながる大きなエラーを一つ。さらには、送りバントも失敗で、昨日以上に空気の男。昨日の白原さんじゃないが、これなら本気で尼子を代わりに使った方が打つかもしれない。
「某野球ゲームなら、『4番×』がついてるよな……」
「何のことですか?」
「いや……なんでもない」
雑談は程々で、グランドを見る。マウンドにできた輪が解かれ、いよいよ勝負だ。しかし、その初球……。
「あ……」
153キロの速球をバットに当てたものの、打球は前進守備のセカンド正面へ。4-2-3とボールは渡り、ゲームセット。試合は先攻チームの勝利に終わった。
「くぉらぁ!尾山!てめぇ、なめとんのか!」
1塁側ベンチに座る白原さんは、顔を真っ赤にしてヘッドスライディングしたまま起き上がろうとしない彼に罵声を浴びせた。一方……
「ナイスピッチング!」
3塁側ベンチに戻ってきた湯川を豊原コーチ共々温かく出迎えた。そして、忘れずに、明日はゆっくり休むように伝える。
「さあ、あとは本番を待つだけだな」
やれる準備は、やったつもりだ。尾山は相変わらずだが、昨日叱られていた坂藤にはホームランが出たし、原田もタイムリーを打った。投手陣は、相変わらず盤石だ。
恐れるものは、なにもない。
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