10/8(土)紅白戦
10月8日(土)16時——。鳴尾浜球場
グランドでは、紅白戦が行われている。7回までで、投手は1イニングずつ交代だ。
「大分、コントロールが戻ってきていたな」
「はい。これなら、第1戦は安心して任せられるかと」
1回裏に登板した雨柳の状態を確認していると、豊原コーチが太鼓判を押した。仲能、鳥田といった苦手な左打者を相手に、セカンドゴロと空振りの三振を奪い、上々の出来だった。
「それじゃあ、第1戦は予定通り彼に任せるから、仕上げをお願いしますね」
「承知しました」
豊原コーチはそう言って、そのことを伝えに雨柳がいる室内練習場へ向かった。
「さて、問題は打撃陣だが……」
キーマンに上げる坂藤は、2回表の打席こそヒットを放ったが、4回表の2OUT満塁の場面でも、この7回表の1OUT3塁の場面でも、ポップフライを打ち上げた。
「内角高めを捨てろと言っとるやろが!この馬鹿たれが!」
向かい合う3塁側ベンチから威勢の良い怒鳴り声が聞こえてくる。最近の元気のなさが嘘のように、白原コーチは張り切っている。結局、来季も打撃コーチとして留任することになったそうだ。
「さて、残すは7回裏のみか……」
得点は2対0で先攻チームがリードしている。マウンドは磐佐。すでに1OUTを取っている。
「磐佐の状況はどうなんですか?」
豊原コーチが戻ってきたので訊ねてみると、「いまひとつ」との返事が返ってきた。
「疲れだとは思いますが、それが一時的なものなのか、あるいは長年の蓄積によるものなのか。まだ抑える日もあるので、何とも……」
「そうですか……」
それなら、CSはどうするか。左のワンポイントは1枚でも多く用意したいところだが……。
カン
そう思っていると、都田は打ちそこなってピッチャーゴロ。今日はまあまあ調子がいいのか。それなら取り合えず残そうかなと思っていると……
「「えっ!?」」
その目の前で起こった光景に、隣に立つ豊原さんと共に驚いた。
なんと、1塁へ悪送球を投げて、ランナーを出してしまったのだ。
「おいおいおい……」
呆れ果ててそれ以上の言葉が出ない。なんであの短い距離で暴投を投げる!?
「ま、まあ、得てして短い距離だと、投げづらいこともあるので……」
豊原コーチは、一応はフォローの言葉を述べた。だが、全然心に響かない。これがもし試合で出ればどうなるのか。短期決戦のCSでは命取りになりかねない。
そして、そうこうしている間に続く白宮を歩かせて、遠本はフライアウトに打ち取るも、尾山、原田に連続タイムリーを打たれてしまった。これで2対2だ。
「……使えないな。あれじゃ」
「……そのようですね」
ようやく諦めたのか、豊原コーチとその認識を共有し、共にため息をついた。
カーン!
「「あ……」」
乾いた打球音が響いたかと思ったら、ボールはレフトスタンドへ。ハロスがサヨナラ3ランで、試合は終わるのだった。
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