10/3(月)どうする?御堂筋パレード①

10月3日(月)15時——。大阪市役所


「……それで、どうするんですか。キャッツも優勝したんですよ?これじゃ、ダブルブッキングじゃないですか!」


昨夜優勝を決めたブレーブスの優勝パレードを11月3日に御堂筋で行うと発表した松永市長の会見を受けて、この市役所の会議室には今、その市長を含めた関係者が集まっている。皆、一様に頭を悩ませているのは、実の所、キャッツも11月3日に優勝パレードを御堂筋で行いたいと申請が出ているからだ。


「しかも、ブレーブスは全額公費負担で、キャッツは自腹。市長……次の選挙、負けますよ?」


「だって、仕方ないだろ。まさか逆転優勝するなんて思ってなかったんだから……」


ゆえに、8月にブレーブスの始球式に招かれたときに、つい軽口をたたいてしまったと松永市長は言った。その発言に同情する声も聞こえるが……


「ただ、それならもっと慎重に答えるべきだったのでは?」


副市長が呆れたように言うと、それを支持する声も上がる。その中には、日頃からキャッツファンを公言している幹部も含まれている。


「とにかく、こうなってはキャッツのパレードも全額公費負担とするしかないでしょうが、問題はいつするかですな。まさか、同時にはできんでしょう?」


しかも、日本シリーズで戦う可能性も高く、その場合は、一方が勝者で、もう一方は敗者となってパレードに臨むことになるのだ。勝った方は構わないかもしれないが、負けた方はかなり辛いものとなるだろう。ゆえに、一緒にすることはできない。


「それなら、あとから優勝が決まったブレーブスを1週間後にずらしては?」


「市長があそこまで公言しておいて、それはできんでしょう。幸い、キャッツの方は公表されていないことですし、延期するならキャッツの方では?」


「だが、その場合、へそを曲げられて神戸でしかやらないと言われかねませんぞ。それでもよろしいのかな?それにファンの数はキャッツの方が多いわけで……」


「それなら、午前中はキャッツ、午後はブレーブスでいいのでは?」


「いや……その場合、どっちが先で後なのかで揉めるな」


喧々諤々。会議に出席している者たちは、各々好き勝手に話し始めた。結局、いいアイデアは生まれず、この日はお開きとなるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る