10/4(火)こちらも昨年のリベンジ
10月4日(火)14時——。神戸のとある酒造会社
「そうか。今年はそんなにも売れているのか」
「はい!全国の卸売業者から追加の注文が次から次へと届いていて、もうすぐ完売です!」
月に一度の定例会議で、営業部長が興奮気味にそう報告したのを聞いて、つい目頭が熱くなる。そして、バカ売れしているのは、キャッツとコラボした日本酒だ。
「社長!?」
「……ああ、大丈夫だ。つい、去年のことを思い出して目頭が熱くなっただけだ」
隣に座り心配そうに声を上げた専務にそう返して、ポケットからハンカチを取り出して目元を拭う。今年も優勝を逃して、スベッたらどうしようと思っていたが、勝負に出てよかったとつくづく思った。
「まあ、お気持ちはわかりますよ。昨年は優勝を5厘差で逃したために、全然売れなかったですからね」
「それどころか、12月までの期間限定商品のはずなのに、賞味期限切れまじかの今年の夏になっても全然売れず……」
「そういえば、うちの近所のスーパーで、ついこないだ見かけましたよ。『見切り品コーナー』で大量に。しかも値段は半額になった上でさらに半額になってましたし……」
「待て。それじゃ500円か?2Lのパックだろ。そりゃ、安すぎだろ……」
この場に集う幹部たちが口々にそのような悲惨な状況だったことを報告してくれる。
もちろん、そんなことは知っている。スーパーの見切り品コーナーの件もそうだ。悲しくなって、そこにあった2本を買ったら、次の日にもまた2本同じ場所に置かれていて……はあ、アレは辛かった。
「いっそのこと、倉庫に返品された去年の残りも売れないかな……。ほら、上から今年の優勝ロゴのシールを貼るなんかしてさ……」
「お気持ちはわかりますが、製造から1年過ぎてますので、味は落ちるのできっとバレますよ……」
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