10/1(土)明日の最終戦を前に
10月1日(土)20時半——。大阪
「……ノーアウト満塁から三者連続三振って……」
見つめるのは、テレビに映るコインズ対ラビッツのクライマックスシリーズへの出場権をかけた試合。勝てば、ラビッツが3位を確定させて出場権を得るという試合で見せた太勢の魂の投球に、思わず見とれて言葉を零した。
「この場面で守護神を投入する秦監督も凄いけど、それに応えたこいつも凄いなぁ」
場合によっては、ファイナルステージで立ちはだかるかもしれない相手ではあるが、素直に称賛の声を送る。もっとも、相手に届くことはないが。
ただ、この太勢の頑張りにラビッツ打線は報いることはできず、9回表は崗本の併殺打でジ・エンド。ついに並ばれて、逆に明日コインズが勝利すれば、コインズの3位が確定するという面白い展開となってきた。さてさて、その結末はどうなることやら。
「まあ、どっちでもいいんだけどね」
暇だから見ていたテレビを消して、今度は机の上にあったスポーツ紙を手に取る。そこには、「能美投手、引退」の記事が鮮やかに彩られて掲載されていた。
「糸川、副留、そして、能美か。いずれも、キャッツを支えてくれた大黒柱だ。それが揃いも揃って、同じ年に引退するとはな……」
思わず胸が締め付けられる思いがして呟いた。「おつかれさま」と。ただ、叶うことなら、オリエントではなくキャッツで現役を終えて欲しかった。そういう気持ちは多少はある。
「まあ、今更言っても仕方ないか……」
実際の所、副留にしても能美にしても、キャッツ退団後も華々しく活躍したわけではない。そう考えれば、あのとき二人を切った球団の判断も間違っていたわけではないだろう。こういった寂しい気持ちはあるけれども。
「さて、明日は最終戦か……」
順位が確定した上に、注目されている3位争いに絡まない試合。いっそのこと、村豚に56号本塁打を打たしてやるというのもありかもしれない。
……そう思いながら自宅でのんびり最終戦前夜を過ごす辛井であった。
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