9/27(火)対バードズ勝利 4-1 【85勝52敗4分け】

9月27日(火)21時40分——。神社の森球場


試合が終わり、3塁側スタンドの前からレフトポールへ向かう途中……


「辛井!辞めるなんて嘘だろ!」


「キャッツを見捨てないで!」


……今朝の新聞を見たのだろう。ファンたちが声を上げているのが聞こえた。今日は、雨柳が約2か月ぶりに勝利し、最多勝をほぼ確実にした試合だというのに、雨柳を称える声よりもそちらの声の方が大きいように感じた。


原因は、今朝スポーツ紙が一斉に報じた『辛井監督代行、今季限りで退任。後任に原田元監督が内定』という記事。次の監督が誰になるかは聞いていないが、自分に限ってはその通りだから、否定することもできない。


「……まさかと思いますが、嵩津監督に花束を渡したくないから、わざとリークした?」


「まさか!流石に、そんな小さな理由でリークなんてしないですよ」


共に帰り道を歩くミスターからそう言われて、思いっきり否定した。大体、このように退任が公になっても、花束贈呈はやるらしい。まあ、お互いにだが。……ああ、キモチワルイ。


「でも、一体どうして漏れたのでしょうかね?いつも思うのですが、この『球団関係者』って誰なんでしょう?」


「わかりません。ただ……辛井さんを除いてこのことを知っているのは、ベンチではわたしと豊原さん、それにフロントから聞いたらしい白原さんの3名。さり気なく確認しましたが、どなたも話した覚えはないそうで……」


「それなら、やはりフロントの方からかな?」


「おそらく」


その答えに思わずため息が出た。いつものことながら、この球団の情報統制ってどうなっているんだろうと。


「ところで、白原さんも退任されるらしいですね」


今の話で思い出して、ミスターに確認すると、彼は頷いた。曰く、先日の暴言騒動で己を顧みた結果、そう決めたと。


「まあ、確かにアレは酷かったけど、いいコーチでしたからね。最後はわだかまりが解けるといいのですが……」


あの日以来、碌に会話することもなければ、目も合わせてくれない。打撃コーチの役割はそれでもキッチリ果たしてはくれているが……このままでいいはずはない。


「わかりました。他のコーチとも相談して、仲直りの機会を持てるように考えましょう」


「よろしく頼みます」

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