9月25日（日）22時——。大阪日日新聞

「おい、聞いたか？」

「何がっスか、先輩」

「バードズの嵩津監督が辞任だってさ」

「えっ！？」

慌ててスマホを見ると、速報としてそのニュースが報じられていた。どうやら、今日のコインズとの試合後に囲み取材で表明したらしい。全ての責任は自分にあるからと。

「まあ、最大９ゲーム差でしたっけ？いくらコロナのせいもあるとはいえ、情けない話ですからね……」

しかも、そのコロナも日頃の管理の甘さが原因で広まったとあっては、言い訳にもならない。そう思えば、辞めるのは当然なのかもしれない。ましてや、昨年同じく９ゲーム差をひっくり返されたのに、それでも辞めなかったお方が今年どうなったのかを思えば。

「でも、先輩。うちはこのニュース、扱わないんすよね？関ヶ原より東の話ですし……」

「それがな……どうやら１面で扱うらしい。しかも、わざわざ貯金の推移表までつけてな」

「わぁ……それって、相当な嫌味ですよね。キャッツ・ファンは喜ぶでしょうが……」

「ああ。さらにいうとだな、写真は泣き顔に鼻水だらだら。おまけに『きっと大丈夫』タオルがスタンドの地面に放置されて、無残に踏みつけられている写真も掲載するらしい」

「ホント手が込んでますよね。でも、都合よくそんな写真なんかあるんですか？」

「顔写真は矢崎監督の物を元に合成するらしいし、タオルの写真は、今から写真班がわざわざ近くの市営球場に行って、それらしい写真を撮影するらしい。編集長がどうしても必要だからと言ってな」

「それって、捏造じゃないですか……」

「捏造でも何でも、キャッツ・ファンの皆様が喜ぶ記事をお届けするのが我々の役目だからな。それに、今日はキャッツの試合もないし、ネタもないというのもある。新監督の話題は優勝が決まったというのに未だにタブーのようだしな」

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい