9月14日（水）21時40分——。鳴尾浜球場

LED照明が照らす中、一列になってスタンドに頭を下げる。同時に、無数の拍手が鳴り響く。

６対５——。

ハラハラドキドキの試合展開だったが、勝ち切ったのは大きい。そして、マジックはついに『２』となった。残り８試合。ここまでくれば、あとはどこで優勝を決めるかだ。

「最短で17日の後楽園ドームか。できれば、18日の鳴尾浜で決めたいが……」

ベンチに戻った後、帰り支度も程々に日程を確認する。18日に優勝するためには、16、17日とバードズに勝ってもらう必要がある。

「……いやぁ、バードズは応援したくないなぁ」

思わず本音が零れた。以前から続く因縁を思えば、それだけは勘弁してもらいたい。「きっと大丈夫」タオルなど、犬の糞がついた土足で踏みつけて燃やしたいくらいなのだ。

「……まあ、辛井さんが思っていることは、あちらさんも思っているでしょう。もしかしたら、わざと負けるかもしれませんよ？」

「わざと？」

「だって、18日まで優勝が持ち越されたら、目の前で胴上げを見る可能性大ですよ。それなら、明日、明後日負けて、ドームで決めてもらった方がいいじゃないですか。さらに言えば、18日にうちが負けたにも関わらず、胴上げをする展開を望んでいるかも？」

ミスターに指摘されて、ぞっとした。20年前にラビッツが鳴尾浜でサヨナラ負けしたのに胴上げをしたのと同じ構図だ。あのときテレビを見ながら大笑いしていたが、それだけに、あれだけは嫌だなと当然思った。

そして、嵩津ならそれくらいのことを考えているような気がする。

「そうなると、うちも17日は全力で勝ちにいかないとダメだな……」

負けて胴上げするくらいなら、場所などどこでもいいのかもしれない。

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