9/15(木)時代の変わり目

9月15日(木)15時——。梅戸電鉄本社


「……そうか。能美君も引退を決断したか」


副留、糸川、能美。かつて、キャッツで活躍した選手たちが今年相次いでユニフォームを脱ぐ決断をした。まさに、時代の変わり目なのかもしれない。寂しい気持ちが一瞬よぎるが、いつかは誰もが通る道。かくいう自分だって、いつかはこのオーナーという職を退く日が来るのだ。


「何かしてやりたいが、リーグが違うからなぁ……」


そう言いながら、スマホの画面を閉じる。そうしていると、ドアを叩く音が聞こえた。


「入りたまえ」


「失礼します」


そう言って現れたのは、百南球団社長だ。


「君が来たということは、次の監督は辛井君に一本化することができた、そう思っていいんだね?」


「はい。谷川副社長の説得に時間がかかりましたが、何しろ、優勝監督ですからな。それを差し置いて田平二軍監督などあり得ないと」


それは良かったと胸を撫で下ろした。


「だが、わかっているだろうが、全権監督ではないからな。コーチの人選、ドラフト、FA及び外国人の補強は、フロント手動で行う。そのことを抜かりなくな」


「はい。もちろん、承知しております」


百南社長は、そうはっきりと答えてくれた。


今年優勝したのだから、選手の人件費の高騰は最早避けようがない。それならば、他の所を削る必要がある。コーチは全員留任。何かとやり玉に挙がっている守備コーチの八慈と藤村も、もちろん留任だ。外国人は……円安なのでまた韓国から連れてくるか。


「あとは、いつ辛井代行に伝えるかですが……」


「まあ、優勝が決まってからでいいだろ。全員留任なんだから、それで問題はないはずだ」

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