5月15日（日）夕方——。大阪

「打てないと聞いていたんだけど？」

画面の向こうでボルトが言う。今は自主隔離期間中で、空港近くにホテルに滞在しているが、この様子だと今日の試合をテレビで見たらしい。やる気があってなによりだ。

「これなら、俺、いらないんじゃないか？帰ってもいいかな？」

冗談を言いながら笑う姿に、「そんなことはないよ」とこちらも笑いながら返す。

「それにしても、4番のボーイ。すごいじゃないか。俺も負けねぇようにしないとな」

今日、２本ホームランを打った坂藤選手のことを言っているのだろう。自分のことじゃないのに、うれしくなる。

「もっとも、目下の俺のライバルは、マルトなんだよな。外国人の出場制限枠にしても、ポジションにしても」

それに加えて、ミルキーズから加入した白宮も。いや、白宮はひょっとしたら、レフトか？そうなると、糸川はベンチか？

いやいや、糸川は今日も活躍したし、うーん、そうなると、どうするのだろう？

「おーい、田中。どうした？」

急に黙り込んだからなのか、ボルトが声をかけてきた。

「ごめん、ごめん。なんでもない。それより、何か食べたいものはないか？部屋に届けるように手配するよ？」

「Oh！それはうれしいな。それなら……」

とにかく、戦力は整いつつあるのだ。戦いはまだまだこれからだ。

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