5/12(木)対ギョッズ戦 打てん中止
5月12日(木)16時——。鳴尾浜球場
今日は雨。試合は中止になった。
そんな中、監督代行の辛井さんから緊急招集がかかった。言われた通り室内練習場に行くと、そこには、今日、登板予定のなかったピッチャー、2軍スタッフも勢ぞろいしていた。
「何言うんだろう?」
「まさか、トレードの第2弾があるとか?」
辛井の登場を待つ選手たちは、口々に囁き合った。
「おっ!来たぞ」
誰かがそう言った。入り口から辛井監督代行ら、スタッフが入場してくるのが見える。一同は姿勢を正した。
「皆も、承知の通り、昨日付でトレードが決まりました。糸谷君、高川君、定石君の3名が北海道千歳ミルキーズに、そして、吉野君と白宮君の2名が我がチームに、それぞれ異動することになりました」
特に声は上がらない。すでに既知の事実だからだ。
「言い訳に聞こえるかもしれないが、今回のトレードについては、我々首脳陣は一切関与しておらず、球団主導で行われたものです。そして、この3名が選ばれたのは、ここ最近のプレイがオーナーはじめ、球団幹部の方々の逆鱗に触れたからに他なりません」
逆鱗に?そういえば、糸谷さんはこないだコーチに怒られるようなプレイをしてたし、高川さんは出場するたびに落球してたし、定石さんはおとといの試合で1アウトも取れずにノックアウトされたっけ……。
「球団では、現在、更なるトレードを模索している聞きています。そこには聖域はありません。桐浪投手だけでなく、遠本選手や坂藤選手であっても例外ではない……と聞いています」
思わず唾をのむ。彼らはチーム不動の看板選手だ。その選手でさえも、トレードに?
「……ということで、これまで無関心に近かった球団のお偉いさん方が見ているということを意識して、全員野球に取り組むように。なお、言うまでもありませんが、トレードにかからなかったからとっても安心はできません。秋には大量に人員整理が行われるとも聞いていますし……」
つまり、雨天中止でも早くは帰れないのか。さて、家族のために、バット振ってこよう。
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