4/12(火)対スネークス敗戦 1-2

4月12日(火)21時——。中京ドーム球場


「なーにが『期待してください』だ!ボケ!!変わってないじゃないか!!」


「おまえも辞めちまえ!!」


「負けた、負けた、また負けた~。弱い子猫がまた負けた~♪」


1―2。8回裏に逆転されて、初戦を勝利で飾ることができなかった辛井監督に、スタンドの観客は容赦なく罵声を浴びせる。


『お客様にお知らせします。スタンドには物を投げ入れないでください』


スネークズのヒーローインタビューの最中に関わらず次から次へと投げ入れられる応援グッズに、異例のアナウンスが流れた。


「……監督、すみません。ボクが打たれたせいで……」


負け投手になった若いピッチャーが頭を下げる。「おまえのせいじゃない」と言わなければいけないのに、その言葉がどうしても出なかった。


そのうち、他の選手がそのピッチャーの肩を抱き、励ましながらベンチを後にする。見れば、ほとんどの選手がいなくなっていた。


(完全に力負けだった……)


相手はエースの太野。ただでさえ、毎年カモにされているのに、この貧打線。さらに、鬼門の名古屋とくれば……勝てる要素は、新大阪駅で新幹線に乗る前から皆無だった。


それでも、少しでも勝てるようにと、移動中の新幹線の中でネットのコメントをあさり、打線を組み直しても見た。不評だった監督のお気に入りのセカンドも、今日の試合では先発起用しなかった。


……にもかかわらず、相変わらずの貧打線。改めて、ネット民の意見は当てにならないと痛感した。


それでも、まぐれ当たりのホームランが出て、終盤まで1―0でリードしていた。そのまま勝てるかと思ったが……現実はそんなに甘くはなかった。


(まあ、そんなものだよな……)


簡単に勝てるチームなら、矢崎監督は逃げ出していない。


それでも、明日は勝てるといいな、と思い、『わらじトンカツ』を食べに行く。

あとには、くちゃくちゃに丸まった、『初勝利のコメント(案)』と書かれたメモが残された。

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