4/11(月)記者会見
4月11日(月)15時——。球団本部事務所
「えー、それではただいまより、矢崎監督の休養に関する説明と辛井監督代行の就任会見を行います」
球団本部長がマイクを片手にそう話すと、一斉にフラッシュがたかれた。
(結局、断れなかった……)
なんでも、本来であれば代行の候補である井下ヘッドコーチと南川打撃コーチは、退団するそうだ。二軍監督の田平さんは遠征中で、しかも朝から着信拒否をしているらしく連絡が取れなかったらしい。その手があったか、と今更ながら感心する。
さらに、他球団の元監督であった越智さんにも声をかけたらしいが、「馬の育成に忙しい」と断られたとか。本部長は「馬主になったのか」って唸ってたけど、それって、ソーシャルゲームだよね?要はやりたくないということだろう。
まあ、そんなこんなで今ここに座っているわけだ。
えっ?なんで断らなかったって?
断れば井下さんたちと一緒に退団することになると言われたからさ。バットを投げるしか特技がないから、ここをクビになったら、数か月に1回回ってくる解説の仕事をするか、他の仕事をしなければならない。
だったら、と思って引き受けたわけだ。無論、代行退任後も何らかのポストで球団に残してもらう条件を取り付けたうえでだが。
「それでは、監督代行。抱負をお願いします」
おっと、どうやら出番だ。
「えーわたくし、辛井亮太は……」
マスコミが座る席の後ろに投影されるスクリーンを見ながら、ただそれを読み上げる。もちろん、マスコミの人たちも知ったうえでの茶番劇。いわゆる、お約束だ。
ただ、ファンに期待を抱かすように、演技しながら話さなければならない。
日曜日の鳴尾浜では、怒ったファンが応援グッズをグランドに投げ入れ、怒鳴り声をあげていた。明日から名古屋遠征だから、一先ずは落ち着くかもしれないけど、いつ大規模な暴動が起こってもおかしくない状態なのだ。
「……まだまだ、戦いはこれからです。ファンの皆様には、勝利を届けれるよう頑張ります。期待してください!」
言った後で、「無理だろ」と口に出さず独り突っ込む。
場内は、拍手が鳴り響いた。
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