4/11(月)監督代行就任要請
4月11日(月)早朝——。某打撃コーチの自宅
「えっ!?わたしがですか?」
『君しかいないとオーナーが仰っている。15時までには決めないといけないから、とにかくすぐに事務所に来てくれ』
早朝、突然かかってきた球団本部長からの電話の内容に驚く。まさかの監督代行就任への要請。いや……監督が休養することは監督から昨日直接電話貰ってたから知ってたが……サブの打撃コーチに過ぎない俺にとっては他人事だと思っていた。
妻と子が心配そうに見つめる。もし、監督代行になれば……もし、負けが込めば……バッシングは容赦なく二人にも降り注ぐだろう。
そう思うと、引き受けるべきではないと思った。
「大丈夫だ。断ってくる」
そう言いながら、スーツに袖を通す。
球団事務所がある鳴尾浜に向かうため電車に乗ったが、車内は監督代行の話題で持ちきりだった。
「やっぱり、二軍監督の田平さんか?」
「監督代行じゃなくて、正式な監督としてOBの川玉さんっていうのもあり得るのでは?」
「川玉さんは国営テレビによく出てるから、手放さないのでは?」
みんな好き勝手言っている。しかし、目の前に立つ男が持つ日日新聞に掲載されている監督の写真。なぜ、号泣写真なの?
「優勝するなら、越智がいいと思うんだけどな」
「えー、それはあかんやろ。だって越智は清洲スネークの監督やったやで?奴の魂の色は黄色じゃない。青かオレンジや」
「せやけど、仙星さんの例もあるし、あり得ない話ではないのでは?」
越智さんか……。確かにあの人が就任したら、数年以内に優勝できそうだ。ただ、フロントとマスコミは嫌がるだろうけど。
『なるおはま~なるおはま~お降りの方は~』
おっと、着いたようだ。
大丈夫だ。事務所に顔出して一言お断りを伝えて帰るだけだ。
そうだ。帰りはケーキを買って帰ろう。心配をさせたせめてものお詫びに。
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