簒奪後にあるもの

バブみ道日丿宮組

お題:過去の略奪 制限時間:30分

簒奪後にあるもの

 女装学園。

 聞くには聞いたけれど……。

「ほんとに女子しかいない」

「男の子もちゃんといるよ」

 わかってる。わかってるけれど、認めたくない。誰が女子で、誰が男子。知りたいけれど、知りたくない。そんな感情が激しく暴れまわってる。

「あなたは男子に思われるかもね」

「えぇ!? そ、そんなことないですよ」

 うつむく。

 ストーンとした体型が目に入る。

 うん……男子が女装してるかもしれない。むしろ女装してる男子のほうが立派なものを持ってるかもしれない。

 男子がつけるというなら、女子である私がつけてもいいかもしれない。

「で、でも、あれついてないですよ!?」

 なぞの反論。

 胸はついてるよという強気。

「ここじゃ、自由に取り出すことができる」

 握ってるポーズ。

「自由すぎるでしょ!?」

 私が通うことになったこの学園は、別世界にある。ラブホテルの事務室から、別世界に飛び。そしてそこからなんと徒歩10分の距離に存在してる。

 別世界っていうんだから、ファンタジーが広がってるんだろうなと思いきゃ、科学文明が発展した私の世界とほぼ変わらない。理由は技術交換してるとかなんとからしい。

 知らないだけで私の世界にもファンタジーは少し見え隠れしてるらしいが、私は知らない。

「昔は普通に握りつぶしたって聞く」

「痛そう?!」

 思わずお股がきゅんとした。ついてないけど。

「過去は過去。今は今。別世界人にもあなたと同じ世界の人もいる」

「私の世界には別世界人いなかったと思うな」

 例えば、掲示板で話してる2人。猫耳に、うさ耳。おまけにしっぽがくるくると動いてる。はたして、校門近く。ワニの顔、トカゲの顔、鶏顔。そして牛乳。そう牛乳だ。どうみてもそうとしかいえない乳がいた。さぞ美味しいミルクが……。

「よだれ」

 いけないと、口元を拭う。

 あんな癒やされキャラなんてこの世の罪のように、深いものがあると思う。それに気づかない人間は果てしなくいなそう。

「いけそう?」

「いけるとは思うけれど、なれるまではオーバーリアクションしちゃうかも」

 下駄箱がある場所に向かうと、次々に挨拶をもらう。もちろん、私じゃなくて隣の人物。彼女は吸血鬼の真祖の孫という立場だ。他の人にないパラメータを持ってる。有名人ってやつだ。

 そんな人の隣にいる私は当然のようにじろじろと見られる。


 いったい誰? どの家の人? 種族は何かしら?


 そういった言葉がひそひそと聞こえる。

 私は一般人。ありそうなパラメータは厄介者。

 もし彼女に出会わなければ、孤児院行きか、親戚の慰めものになるかだっただろう。

 逃げた両親には恨みしかないが、こうして彼女と別の世界にこれることになったことだけは、許してあげてもいい。

「気にしたら負け」

 上履きを先に履いた彼女は、はやくと手招き。落ち着く暇もなく、私は彼女に続いた。

「最初は職員室。そこからは一人で頑張って」

 いけるかな。

 転校なんてしたことがないし……なにより彼女が側にいないのは不安でしかない。

 数分もたたずとして、職員室前に到着。

「なにかあったら、すぐ助けに行くから」

 あぁ……天使だ。天使様がいらっしゃる。

 それじゃと彼女は行ってしまった。

 残された私は、職員室前で深呼吸を繰り返した。

 ここは親戚がいる場所じゃない。私を厭らしい目でみてこない。道具だと思わない。親族の面汚しとも思われない。

 大丈夫。大丈夫なんだ。ここには敵はいない(彼女の近くにいるから敵と思われることはあるかもしれないが、親戚とは違う)。

「よしっ」

 覚悟は決まった。あとは行くだけだ!

 コンコンとドアをノックし、足を踏み入れた。

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簒奪後にあるもの バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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