第5話 用水路工事・山の掘削・道の舗装
359日目~411日目。
水車や風車が欲しいところだが、村に一人も技師がいないので作れなかった。
頑張ってスライムにそれっぽいものを作ってもらったが、石材と木材を無駄にしただけで終わってしまった。
川の水は緩やかすぎて水車をまわすほどの力はなかったし、自分で作ったなんちゃって車輪はやたらと重すぎた。どうしても水車を使いたいならば、引っ張ってくる川の水の量を増やすほかないだろう。
(川を灌漑工事するか。水が土にしみこぼれるともったいないから河床を石で敷き詰めよう。そして脇を石垣で固める。そして、山から流れる水の量を増やして、勢いを強くして……)
気が遠くなりそうだ。まともに取り掛かったら何年もかかりそうな、大掛かりな工事である。
(面倒くさいし、俺が寝てる間にスライムにやってもらおう)
ということで、起きてる間は俺の仕事を手伝ってもらい、寝てる間にスライムには「でっかい石を集めてこい」「上流から順番に、河床に石畳を敷き詰めてこい」「川の水があふれそうになったら脇に石垣を作れ」という命令を遂行してもらうことにした。
時間をかければいつか、水を潤沢に使えて、かつ水車の動力を有効活用できるような豊かな村になるかもしれない。
412日目~466日目。
山や森に罠を仕掛けるついでに、山を掘ろうと決意した。
石炭があるかどうか、鉱石が見つかるかどうかはどうでもいい。そもそも、村にも鉱山堀りに詳しい奴なんて一人もいない。資源なんて見つからなくてもよくて、ただ掘りたいのだ。少なくとも掘れば石材はたくさん出てくる。
なのでとりあえず、スライムに「山を適当に掘ってくれ」「いい感じの塊とかが見つかったら村に並べてくれ」と命じておく。
(うちのスライム、本当に何でもやってくれるなあ)
最近分かったことだが、いっぱい食べて成長したおかげか、うちのスライムは体をとても長く伸ばせるようになった。
それこそ、村の端から端まで体を伸ばして、重いものを運ぶことができるぐらいになった。
そればかりでなく、体を切り離して、分離することもできるようになった。一匹で複数の仕事をこなせるのだ。
これは非常に便利である。
とはいえ分離体は、核をもたないので、複雑な命令はこなせないし、あんまり長く切り離すと何にもできなくなってしまうので、都度都度本体に戻す必要はあったが。
でも大きな進歩である。
簡単な命令だったら半ば勝手に実行してくれるのだから。
(洗濯してくれって命令したら、勝手に服の汚れを食べてくれるしな。これが何気に便利なんだよなあ)
どんどんスライムが強くなっていくのを感じる。契約した当初と比較すると、数十倍ほどに魔力が膨れ上がっている気がする。このスライムは本当に底が見えない。
467日目~511日目。
この勢いで道も作ってしまえばいいのでは、と思いつく。
やり方はいつも通り、地面の表面を食べてもらって、石畳を敷き詰めるだけである。
手始めに、荒れっぱなしの道を整備して、隣の領地までの道を敷き詰めることにした。
一応、隣の領地のアルチンボルト男爵には、伝書鳩で書面を送っておいた。
『道を作るので、お金を少し出してほしい。嫌なら通行税はうちが全額回収して、利権はすべてバスキア領のものになる』
我ながらめちゃくちゃな要求である。勝手に道を作る計画を立てておいて、勝手に金を無心するなんて一方的すぎる。
だがまあ、貴族社会なんて案外こんなものである。そもそも呑んでもらうつもりもない。
正直、俺が勝手に作れる道なんて大したことがない。王国法には、『一定以上の長さ・大きさの道は、王家に報告の上で作ること、また王家と税を折半すること』なんて決まりもあるのだ。
バカでかい道をつくるなら王家に許可を取る必要がある。
きっとアルチンボルト男爵も、俺の作る道なんかに興味なんてないだろう。
(後で、アルチンボルト男爵と交渉して、『そちらはお金は出さなくていい、徴税はバスキア領が行うが通行税はお互いに合議で決める、向こう五年はバスキア領はアルチンボルト領からやってくる通行には税を課さない』ぐらいの条件で妥結しよう)
ここバスキアは、土地だけは広いので、他にも後三つの領土と接している。ボッティチェッリ男爵。デューラー男爵。ブオナローティ男爵。
それぞれの貴族たちに向けて同じような書面を送りつけて、俺はあとはほったらかしにしておいた。
根回し? 興味もないし面倒くさい。
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