☆ティア・メルクリウス 15歳(魔法学園の新入生)の場合
「ふふっ、やっぱ魔法学園のこの制服、可愛いよねぇ♪」
自室の鏡の前で、明日から入学することになっている「ガスト王立魔法学園」の制服を着て、ちょっぴりドヤ顔風味な表情で色々ポーズをとっているボク。
え? ナルシスト? 失礼な! ちょっと感慨に浸ってただけだモン!
ボクの名前はティア、ティア・メルクリウス。爵位とかは持ってない平民の生まれだけど、父さんはこの王都で5本の指に入る商会の主で、その家族のボクらも割と裕福な暮らしをさせてもらってると思う。
ボク自身はこの春15歳になったばかりのピチピチ(死語)の美少女で、それなりに魔法の素質があった(プラス必死の詰め込み勉強の)おかげで、先日、見事に王立魔法学園の試験に合格したんだ。
何? 「自分で自分を美少女って言うな」?
アハハ……まぁ、そこんトコはちょっと特殊な事情があるんだ。
実はボク、元からのティア本人じゃないんだよね。
ここ“ティスファ”とは違う世界──21世紀・地球の日本で高校生やってたんだけど、どうやらラノベとかアニメでよく見る「異世界召喚」ってヤツで、この世界に連れて来られたみたいなんだ。
ちなみに、元の名前は「野々田清彦」、当然男だからね。
これは、ボクと同様に此方に召喚されたクラスメイトの中で、いちばん出世した(なんと四英雄と呼ばれてるんだ!)4人のひとり、賢者ルシウスこと橘豊くんが教えてくれたんだけど……。
どうもボクらは、この世界の神様(?)に魂だけの状態で召喚されて、「不慮の事故等で瀕死/あるいは死んだばかり」の人間の体の中に魂を入れられたみたいなんだ。
ちなみにボクこと清彦は、当時6歳の幼女ティアの身体で目覚めたってワケ。
最初はそりゃあ戸惑ったよ?
一応、ティア本人の記憶は読めたから、この世界の常識や家族など身の回りの事に関する知識は(6歳の子なりに)あるにはあったんだけど……。
剣と魔法のファンタジー世界であるティスファと現代日本では、なにせ環境も状況も違い過ぎたからね。
しかも、16歳の庶民な男子高校生から、まだ6歳ながら将来が大いに愉しみな美幼女かつ大金持ちの娘さんだよ? これですんなり順応できるほど、ボクはアドリブに強くないんだよ~。
幸いなことに、もともと“この”ティアちゃん自体、割とじゃじゃ馬でガサツな子だったらしく、ボクが無意識に男っぽい言動しても、周囲からは「またか」って感じで流されたのは助かったかな。
──その代わりに家が家(貴族じゃないけど旧家のお金持ち)だったから、かなーり厳しく躾けられましたよ、うん。
ボクとしても、変に悪目立ちしたり、事情がバレたりするのは避けたかったし、渋々ながらその
然るべき場で(短時間なら)特大の猫をカブって、「いいとこのおぜうさま」を“演じる”くらいはできるようになったし。
まぁ、それでも周囲からの評価は「フリーダムなお転婆娘」みたいなんだけどね──解せぬ。
魔法学園に通うことを決めたのも、半分は
いやぁ、かつての男子高生時代はクラスではギリギリ中の上くらいの成績をキープしていた程度のおツムの人間にとって、この国で一番の難関校に入るのには、かな~り苦労させられましたよ。
座学は、まぁ何とかならないでもないんだけど(ウチ、お金持ちだから高価な書物も割と気軽に買ってもらえたしね)、さすがに実技の独学は無理だった。
Web小説とかでは、転生主人公たちが幼少時、下手したら乳幼児期から独力で魔力を練ったり鍛えたりして、なまらスゲェ魔法使いになってたりするけど、少なくともボクには無理むりのカタツムリ!
仕方ないから
やっぱチート満載の「賢者様」は人に教えるのもすごいんだなー、凡人のボクとしては憧れちゃうなー。
※教え方が多少良かろうと、たった3日で10近い魔法が使えるようになるのは十分凡人じゃないです。一週間くらいで魔力がかろうじて感じ取れるようになるのが“普通”です。(賢者ルシウス・談)
ちなみに、召喚されたのは、あの日、教室に残っていた者12人で、橘くんの尽力で、その全員の行方が今ではわかっているのは不幸中の幸いかな。
しかも、辺境伯の息子に生まれて勇者になったアルサル(田中功くん)以外は、全員王都在住だしね──ああ、聖女モルガナ(山本潔史くん)は、田中くんの領地について行ったんだっけ。
そのうちの何人かとは両親の目を盗んでこっそり会ってお茶したりしてるんだけど、学園の寮に入れば、そのヘンも少し楽になるかなぁ。
でも、入学してしばらくは授業の予習復習に専念しないといけないかも。何せ、魔法の知識とか実力とかが周囲と比べて圧倒的に足りてないだろうし。
よーし、久しぶりの学園(しかも女学生!)生活、がんばるゾイ!!
* * *
入学してから1ヵ月余りが過ぎて4回目の週末を迎える頃、ようやくボクも学園生活に慣れてきた感じ。
来週提出の課題はもう済ませたし、かなり親しくなったルームメイトの子もひと月ぶりに実家に帰っちゃってるから、久しぶりに街を出歩いてみようかな♪
(そうだ! どうせなら……)
ボクは、幼い頃から贔屓にしているミドルタウンにある食堂へと足を運んだ。
(ここだと、いろいろ懐かしい料理が食べられるんだよねぇ♪)
「こんにちはー」
15歳のか弱い乙女(少なくとも身体はネ)にはちょっぴり重い、分厚い木のドアを開けてお店に入ると、まだお昼には少し早いせいか、お客さんの入りは4割程度って感じだった。
「いらっしゃいませぇ……って、なんだ、ティアじゃない。ちょっと久しぶり。元気してた?」
明るい声で出迎えてくれる、この上品さとセクシーさを両立させたような格好の美人さんは、この店の看板娘のエリーさん。
──そして、
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