LIAR

 本当に善意で言ったのに、「お世辞ありがとう」と返された。気分が悪い。私の言い方が悪かったのだろうか。わざとらしい言い方をしたつもりはないが、相手にはそう見えたかもしれない。


「お世辞じゃないよ」


 その一言は、言わない。なぜなら、もう信じてもらえないだろうから。信用がない。私の憶えている限りでは。私は嘘などついたことがないはずなのだが。そんなことを言ったところで言い訳にしか聞こえない。


 自然と視線は、下を向く。心の中で、ため息をつく。なぜ伝わらないのだろう。伝えられないのだろう。人は真実も嘘も言うから、見分けがつかない。


 そういえばお世辞というのは嘘に入るのだろうか。いや、本当のことではないのだから嘘になるのだろう。善意のある嘘というのも存在するわけだな。ややこしい。私からしたら嘘なんてついてほしくはないのだけれど。この世界に嘘がなければ、分かりやすいのに。


 そう思うが、私が一時期「人狼ゲーム」にハマっていたのを思い出し、唇を嚙む。どうしてだろう。私は、私たちは、嘘をつかずにはいられないのだろうか。人を騙して快感を得られ、罪悪感というものは生まれないのだろうか。


 そう、嘘をつかず本当のことを言う大事さがわからない。嘘を冗談として受け入れる。


 が、その延長で、ついてはいけない嘘をつく。なぜ、こんなにも人間は醜いのだろう。



 そんなこと、私一人が考えたところで、何も変わらない。

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