君と出会った日 続

「ねぇってばー。」

彼女は不機嫌そうな声を出すと僕の腕を揺さぶって起こそうとした。だから、僕はくぐもった声をあげながら、腕をどかしゆっくりと目を開けた。さっきまで腕を置いていたせいで、日の光がとても眩しく感じ思わず顔をしかめた。そんな僕の顔に気にせずに笑顔で出迎えた彼女は、とても可愛くて綺麗だった。

目を開いて見えたのは、ストレートな髪に少しウェーブがかかった栗色の髪。2重まぶたにクリっとした惹き付けられるような明るい緑色の瞳。そして、ニコッと笑った笑顔で白いワンピース姿の女の子がそこにいた。

「やっと。起きた。ずっと寝てて私の話を聞いていないのかと思った。てか、君の目きれーだね。」

少し怒ったような顔をしたと思ったらすぐに笑顔になって、表情が変わる人って本当にいるんだなっと。ぼんやりと思って聞いていたが、君の目きれーだね。の言葉にびっくりした。僕の目がきれい…?どこが…。

僕は少しくせっ毛の髪に目の色は青色でも水色でも無い色。どちらかと言うと青色の絵の具にたくさんの白を入れたような…。

よく、くすんだ青色と言ってバカにされる。

そんな色だ。そして、しかめっ面な顔。髪の色も黒色ではなく薄い黒色。灰色ではないから中途半端な色だった。僕を見るとバカにする人の方が多かった。そんな僕に話しかけて笑ってくれるのは、世界で君ぐらいだろう。

「ねぇー。なんかしゃべってよ。あっ!そうだ。君。気持ちよさそうに寝てるから、私も君の隣で寝よーっと。」

そう言って、彼女は僕の隣に寝っ転がった。内心僕の心臓は忙しく動いていたが、彼女の甘い匂いが鼻をかすめると落ち着いた気分になった。なんだか不思議だった。彼女を見ると心臓が一生懸命動くのに心は落ち着いている。

「きれーだね。」

そう言うと彼女はサクラに向かって手を伸ばした。僕達がいるのはサクラと言ってもシダレザクラの下に寝っ転がっていた。だから、あと少しで彼女の手がサクラに届きそうだ。

そんな彼女を見ながら僕はジダレザクラの花言葉を思い出していた。確か…。「円熟した美人。」「優美。」そして「ごまかし。」

僕達にピッタリだ。そう思った。彼女は優美。僕はごまかし。だって僕は色んな事をごまかして生きているんだから。きっと未来もそうやって生きているのだろう…。今だってそうだ。彼女がいるだけで嬉しいのにそれをごまかして、何ともないように振る舞っているのだから。僕は彼女に一目惚れした事をごまかしている。

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