幸せな日々

暖かな日差しが暑さに変わり、飛んでいた蝶は蝉に変わり、本格的に夏を感じる季節となった。あのシダレザクラは花が散り、新緑の美しい葉っぱがサクラの変わりに芽を出していた。

僕は昔から夏がそこまで好きじゃなかったが、今では特に気にならなくなっていた。だって…彼女がいるから。

彼女は初めて出会った日から、ほぼ毎日僕のところに来てくれた。時間帯は彼女が来れる時に来てもらった。僕は毎日暇なので、彼女が来てくれると嬉しかった。朝に来てくれた時は、夏に咲く花や植物を見ながら、話したりした。昼に来てくれた時は、川に行ってよく川遊びをした。夜に来てくれた時は、蛍を見に行ったり、彼女がこっそり持ってきてくれた花火をしたりした。彼女は学校があって忙しそうなのに、時間を見つけては僕に会いに来てくれた。それが僕にとって大切な時間だった。彼女に一回だけ僕といても楽しいの?と聞いたことがあった。そしたら

「うん…?君…。面白いこと聞くね。楽しいに決まってるよ!」

彼女は少し驚いた顔をして、クスッと笑った。そして僕の目を見つめて、僕が大好きな笑顔で言い切った。彼女は気づいていないだろう…。当たり前のように言ってくれることが、とても嬉しいことに…。そして何より僕の心はとても満たされていた。

「あっ…。でも、一つだけ言うとしたら…。お互いに下の名前で呼び合いたいな。…。だって…。一緒にいるのに君との距離を感じるから…。」

彼女は少し考え込んだ顔をして、恥ずかしそうに言った。僕は彼女の恥ずかしがっている顔を見るのは初めてで、少し驚いた。そして、彼女が喜んでくれるといいなっと思って

「琳乃。」

と言った。最初は驚いた顔をした彼女も少し頬を赤らめて嬉しそうに笑った。そして

「零。」

彼女もお返しとばかりに僕の名前を読んだ。彼女に名前を呼ばれると心臓がうるさいほど動くのがわかった。だけど、それ以上に僕は満たされていた。本当に僕は彼女から貰ってばっかりだ。彼女にもいつかお返しがしたいなっと思いつつ、この幸せな時間を噛み締めた。

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