探偵が目立つ世界にいつのまにか来ちゃったらモブとして事件に巻き込まれるんだけど
ナガレカワ
第1話 事件に巻き込まれたようだ
僕は常々考えていることがある。それは、探偵はなぜあんなにも事件現場に遭遇するのだろうかということだ。
そもそも探偵は誰かの依頼を受け始まる家業であると思うが、僕の知っているじっちゃんがすごい子や変な薬で小さくなった子は、まあ、ありえないほどの事件に遭遇している。
どこかに旅行に行けば事件に遭い、ご飯を食べに行っても遭い、挙句には事件が自宅に飛び込んでくることもある。そのようなことが日常あるものだろうか。
まあ、事件が起こらなければ探偵物語は進んでいかないが、事件が起こってから探偵が呼ばれて出向くという形でもよいような気がするがそれは進行の妨げになるからだろうか。
これはそんなことを考えていた僕のはなし。
いつも通りの朝。何も変わらない朝だ。1Rの部屋にベッドとテレビしかない殺風景な部屋、に見えて僕は漫画を大量に持っている。少年漫画から少女漫画、青年漫画など様々な漫画を読む。
まあ、どうでもいいことだけど。
「次のニュースです。昨夜発生したOL殺人事件の犯人が逮捕されました。この事件は先月28日に起こった事件で探偵である成宮…」
ピッとテレビを消し、土曜日だしどこかでモーニングでもするかと家を出た。
僕の住んでいる町は都会でも田舎でもないほどほどのところ。駅まで徒歩10分、家賃6万のほどほど物件で歩いていける距離に2,3個のカフェはある。
とりあえずカフェに行くかと玄関を開けるとさわやかな風がふっと吹いてくる。モーニング向きの朝だ。さて、どこにするか。
【マーブル】はエビカツサンドがおいしいんだよなあ。エビがぷりぷりでキャベツも挟まってるし。けっこう量もあるけど脂っぽくなくて安くて。想像すると口がエビカツサンドの口になる。
よし、マーブルに行くか。
もはやマーブルしかありえぬ。僕はマーブルまでの道を歩き出した。
マーブルまでの道を歩いていると昨日までは見かけなかった青い広告が何枚も張られていることに気が付く。事件があれば成宮によろしくお願いします?選挙の広告かな。最近変わった選挙広告多いしな。
5分ほどでマーブルについた。マーブルはレンガ調の見た目でレトロな雰囲気が漂っているところが割と気に入っている。よし、入るか。
「カランコロン」
「いらっしゃいませ。一名様ですか?お好きな席へどうぞ。」
中もレンガ調、赤いふかふかのソファーが並んでいる。6つの机と机に2つずつのソファーとこじんまりした店内。どこに座ろうかな。トイレ近いところは嫌だし窓から近すぎるのもなあ。あそこにするか。
僕は窓際の席から一つ空いた席に座った。
メニューを開くといつものメニューや期間限定メニューが目に入ってくる。サンドイッチ、いちごのパフェ、ハンバーガーも美味しいんだよなぁ。
しかし!僕は惑わされない。
ここはエビカツサンドだ。これ以外は見ない。
エビカツサンドのモーニングセットで飲み物はアイスコーヒー!
「すみません。モーニングのエビカツサンドセットでドリンクはアイスコーヒーでお願いします。」と僕が言うと
「かしこまりました。少々お待ちください。」とアルバイトっぽい女の店員さんが答えた。
ふぅ、あとは待つだけか。早く来ないかなぁ、と
少し周りを見渡してみると隣にはおじさんが一人、同じ年ぐらいの男の人が一人、女の人が二人いた。
朝から意外と人がいるもんだな。あの女の子たちかわいいなあ。ちょっとギャルっぽいけどスタイルいいし。あ、向かいにも人がいる。シュッとしてるなあ。あれはイケメンに違いない。どんな顔してるのかな。もう少しで見えそう。
そう思っているとイケメン(仮)がこちらを向いた。やばっ、そっと目をそらした。危ない危ない。見すぎは失礼だ。
すると隣のおじさんが
「おい、アメリカンドッグ一つ」
と大きな声で店員さんに頼んだ。結構威圧的なおじさんだ。
「すみません。いまの時間帯はモーニングなのでアメリカンドッグやっていないんですよ。」
と女性の店員さんが申し訳なさそうに答えた。
そうそう。マーブルのアメリカンドッグもおいしいけどモーニングの時間帯にはやってないんだよ。わかるぞおじさん。食べたい気持ちは。しかし今は食べれない。
僕はうんうんとうなづいているとおじさんは
「そんなの関係ないだろ。この俺が食べたいって言ってるんだ。作れ。なあ店長?作れないなんて言わないよな?」
とより威圧的な態度となった。
おじさん、そういう態度はよくない。食べたい気持ちはよくわかるが、今は食べることが出来ない時間帯なのだから。伝われ、おじさんにこの気持ち。あとモーニングから人が怒鳴っているのを見るのは気分がよくない。
周りの人もそう思っているのか少し迷惑そうな顔でおじさんを眺めている。
「なあ、店長。俺らの中なんだからもちろん作れるよな。」
よりおじさんは威圧感を強める。店長も困った顔をしていたが
「わかりました。今回だけですよ。」
としぶしぶ了解した。
おじさんは満足そうな顔をしている。おじさんと店長はどういう関係なのだろうか。
僕も通い詰めて店長とアメリカンドッグ友達になりたい。しかしこんなわがままを簡単に通してしまうなんて店長に対する好感度が下がってしまうよ。
エビカツサンドが来るまでの時間、僕は今日の予定を立てていた。
今日は2コマから4コマまででバイトなしだから、授業終わったからスーパー言って買い物するか。
実家から届いた野菜が残ってるから野菜はいらんくて、お肉がもうないから買って、、と考えていると
「ガシャー――ン」と音が響き渡る。
どうやらアメリカンドッグおじさんが砂糖を落としてしまったらしい。
「わりいな落としちまったよ。片付けてくれ。」
と悪びれもなくへらへらした顔で言った。
「はい。」と店員さんがかけてきて箒で砂糖をはいている。
この時点でアメリカンドッグおじさんへの僕の好感度は最悪である。カブトムシの幼虫よりも低い。周りの人もアメリカンドッグ野郎にはうんざりといった顔をしている。
「大変お待たせいたしました。モーニングのエビカツサンドセットになります。」
と砂糖を片付けた店員さんが持ってきてくれた。やっと来たエビカツサンド。
パンはクルミ色に焼けていてキャベツはタルタルと混ざって新鮮。まさにシャキシャキといった感じ。カツはサクサクの衣をこれまたクルミ色にまとっていて、、端的に言うととてもおいしそうである。
それではいただきまーすとカツサンドを持ち口を大きく開けると
「うおーーーー。」
とアメリカンドッグおじさんが呻きだした。驚いてとなりを見てみると呻きながら倒れてしまった。
え?なに?おじさん倒れた?
探偵が目立つ世界にいつのまにか来ちゃったらモブとして事件に巻き込まれるんだけど ナガレカワ @naga_rekawa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。探偵が目立つ世界にいつのまにか来ちゃったらモブとして事件に巻き込まれるんだけどの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます