かぜ の ゆうしゃさま と くろい りゅう たいじ

かぜの ゆうしゃさまと くろい りゅう たいじ

　むかしむかし……

　この国（くに）が　まだできたばかりで　うんと小（ちい）さかった頃（ころ）

　一匹（いっぴき）の黒（くろ）い竜（りゅう）がいました

　竜（りゅう）は　怖（こわ）い見（み）た目（め）と　強（つよ）すぎる力（ちから）を持（も）っているせいで　嫌（きら）われものでした

　竜（りゅう）はいつも独（ひと）りぼっちだったので　この世界（せかい）の全部（ぜんぶ）が嫌（きら）いになり

　自分以外（じぶんいがい）の　ものを　すべて滅（ほろ）ぼしてしまおうと

　大暴（おおあば）れしていました

　竜（りゅう）の吐（は）く炎（ほのお）は天（てん）を焼（や）き　爪（つめ）は大地（だいち）を裂（さ）き　咆哮（ほうこう）は海（うみ）を割（わ）りました

　竜（りゅう）に敵（かな）うものは誰（だれ）も無（な）く　どうして暴（あば）れているのか聞（き）くこともできず

　人々（ひとびと）は困（こま）り果（は）てていました

　黒（くろ）い竜（りゅう）を恐（おそ）れて　びくびくと暮（く）らす日々（ひび）が続（つづ）きました

　襲（おそ）われないように　いけにえを差（さ）し出（だ）す村（むら）もありましたが

　それでも竜（りゅう）は暴（あば）れます

　そんなある日（ひ）　一人（ひとり）の若者（わかもの）がどこからともなくやってきて　

　激（はげ）しい戦（たたか）いの末（すえ）に　竜（りゅう）を退治（たいじ）したのです

　人々（ひとびと）は大変（たいへん）喜（よろこ）びました

「どうもありがとう！」

「あなたのおかげで　国（くに）は救（すく）われました！」

　竜（りゅう）を退治（たいじ）してもらったお礼（れい）にと　人々（ひとびと）は若者（わかもの）をもてなしました

　ところが、若者（わかもの）はいつの間（ま）にかふらりといなくなり　どこかへ行（い）ってしまいました

　人々（ひとびと）は若者（わかもの）を捜（さが）しましたが　見（み）つかりません

　風（かぜ）のように現（あらわ）れ　風（かぜ）のように去（さ）った若者（わかもの）のことを

　人々（ひとびと）は忘（わす）れないようにと「風（かぜ）の勇者様（ゆうしゃさま）」と呼（よ）び

　立派（りっぱ）な石碑（せきひ）を立（た）てました

　そして　感謝（かんしゃ）の祈（いの）りを捧（ささ）げ続（つづ）けました

　それから月日（つきひ）が流（なが）れ――平和（へいわ）な日々（ひび）が続（つづ）いていました

　いつしか勇者様（ゆうしゃさま）の活躍（かつやく）を知（し）るものも少（すくな）なくなっていました

　ところが　あるとき黒（くろ）い竜（りゅう）が甦（よみがえ）ってしまいました

　人々（ひとびと）は慌（あわ）てふためきました

　遠（とお）くに逃（に）げる者（もの）

　もう終（お）わりだと絶望（ぜつぼう）に嘆（なげ）くもの

　伝説（でんせつ）の勇者様（ゆうしゃさま）がまた現（あらわ）れ　竜退治（りゅうたいじ）をしてくれないものかと

　祈（いの）りを捧（ささ）げる者（もの）など様々（さまざま）でしたが

　我（われ）こそが竜（りゅう）を退治（たいじ）してみせよう！

　と名乗（なの）りを上（あ）げる者（もの）は　一人（ひとり）もいませんでした

　祈（いの）りが届（とど）き　勇者様（ゆうしゃさま）は現（あらわ）れ　再（ふたた）び竜（りゅう）を退治（たいじ）するための旅（たび）に出（で）ました

　しかし　今度（こんど）はうまくいきません

　勇者様（ゆうしゃさま）は旅（たび）の途中（とちゅう）で疲（つか）れてしまったのです

「勇者（ゆうしゃ）さま　助（たす）けてください！」

「勇者（ゆうしゃ）さま　がんばって！」

　勇者様（ゆうしゃさま）を頼（たよ）る声（こえ）や　ねぎらう声（こえ）は　たくさん聞（き）こえてくるのですが

　どうにも　勇者様（ゆうしゃさま）は頑張（がんば）れなくなって　

　途中（とちゅう）で旅（たび）を止（や）め　おうちに引（ひ）きこもってしまいました

　人々（ひとびと）はどうしたものかと　困（こま）り果（は）てていました

　ある日（ひ）　ひとりの女（おんな）の子（こ）が　勇者様（ゆうしゃさま）のもとを訪（たず）ねました

「ごめんください　勇者（ゆうしゃ）さまはいますか？」

　勇者様（ゆうしゃさま）は居（い）るはずでした　

　ですが　返事（へんじ）はありません

　女（おんな）の子（こ）は粘（ねば）り強（つよ）く戸（と）を叩（たた）き　声（こえ）をかけ続（つづ）けました

　手（て）が痛（いた）くなるほど　数（かぞ）えきれないくらい　戸（と）を叩（たた）き

　喉（のど）が枯（か）れるくらい　声（こえ）をかけ続（つづ）けていると

　突然（とつぜん）　戸（と）が開（ひら）きました

「ゆうしゃさま！」

　女（おんな）の子（こ）は　勇者様（ゆうしゃさま）が出（で）てきてくれて　うれしくて飛（と）び上（あ）がりました

「うるさいなぁ　もぅ」

　勇者様（ゆうしゃさま）はとってもふきげんです

　見（み）ると髪（かみ）はぼさぼさ　服（ふく）はぼろぼろ　顔色（かおいろ）は悪（わる）く　家（いえ）の中（なか）は散（ち）らかり放題（ほうだい）です

「まあたいへん！　どうして綺麗（きれい）にしないのですか？」

　女（おんな）の子（こ）は聞（き）きました

「疲（つか）れたんだよ　もうほっといてよ」

　勇者様（ゆうしゃさま）はめんどくさそうに答（こた）えました

「それなら　わたしが片付（かたづ）けてあげます！」

　女（おんな）の子（こ）はそう言（い）うと

　返事（へんじ）も待（ま）たずに　おうちの中（なか）へ飛（と）び込（こ）み

　てきぱきと片付（かたづ）け　あっという間（ま）に勇者様（ゆうしゃさま）のおうちは　ぴかぴかになりました

「次（つぎ）は勇者（ゆうしゃ）さまの番（ばん）です！」

　女（おんな）の子（こ）はそう言（い）うと　呆気（あっけ）に取（と）られている勇者様（ゆうしゃさま）の手（て）を引（ひ）いて　

　お風呂場（ふろば）へ連（つ）れて行（い）き　体（からだ）も服（ふく）も　せっけんできれいに洗（あら）いました

　ぼさぼさの髪（かみ）は　ていねいに洗（あら）って乾（かわ）かし　油（あぶら）をつけると　

　見違（みちが）えるような　しなやかな髪（かみ）になりました

　勇者様（ゆうしゃさま）は驚（おどろ）くばかりです

「さあ　今度（こんど）は勇者（ゆうしゃ）さまの心（こころ）です！」

　女（おんな）の子（こ）はそう言（い）うと台所（だいどころ）に立（た）ち　心（こころ）を込（こ）めて　料理（りょうり）をたくさんこしらえました

　美味（おい）しそうな匂（にお）いが漂（ただよ）ってきて　勇者様（ゆうしゃさま）のお腹（なか）が鳴（な）りました

「さあできたわ！　めしあがれ！」

　そう言（い）われて　勇者様（ゆうしゃさま）は　いただきます　と言（い）って食（た）べはじめました

　ひとくちぱくり　おいしい！

　こっちもぱくり　あっちもぱくり　おいしい！　おいしい！

　手（て）が止（と）まりません

「たくさん　めしあがれ！　おかわりもありますよ」

　勇者様（ゆうしゃさま）はたくさん食（た）べ　何度（なんど）も何度（なんど）もおかわりをしました

　女（おんな）の子（こ）は向（む）かい側（がわ）に座（すわ）って　ニコニコしています

「食（た）べないの？」

　勇者様（ゆうしゃさま）は　尋（たず）ねました

「おいしそうに食（た）べている勇者（ゆうしゃ）さまを見（み）ているだけで　おなかいっぱいです」

　女（おんな）の子（こ）は答（こた）えました

「どうして　こんなことをしてくれるの？」

　勇者様（ゆうしゃさま）は聞（き）きました

「わたしは　竜（りゅう）のいけにえにされそうだったのを　勇者（ゆうしゃ）さまに助（たす）けてもらいました

　だから　今度（こんど）はわたしが　勇者（ゆうしゃ）さまを助（たす）ける番（ばん）です」

　女（おんな）の子（こ）は言（い）いました

　勇者様（ゆうしゃさま）はびっくりしました

　今（いま）まで人（ひと）を助（たす）けてばかりで　助（たす）けてもらうことなんて　一度（いちど）もありませんでした

「でも　おどろいたの」

　女（おんな）の子（こ）は続（つづ）けて言（い）いました

「勇者（ゆうしゃ）さまって　何（なん）でもできる　すごいひとなんだろうって　思（おも）っていたのに

　ダメなところだらけ　なんですもの」

　そう言（い）って女（おんな）の子（こ）は笑（わら）いました

「君（きみ）は　なんでもできて　すごいね」

　勇者様（ゆうしゃさま）は恥（は）ずかしくて　少（すこ）しすねて言（い）いました

「そんなことないですよ」

　女（おんな）の子（こ）は真面目（まじめ）な顔（かお）になって答（こた）えました

「わたしは巫女（みこ）の家（いえ）の　末娘（すえむすめ）です

　でも巫女（みこ）の力（ちから）が弱（よわ）くて　家（いえ）では役（やく）に立（た）ちませんでした

　お料理（りょうり）と　お掃除（そうじ）と　お洗濯（せんたく）をするしか　できません」

　女（おんな）の子（こ）は　少（すこ）し悲（かな）しそうに言（い）い　下（した）を向（む）きました

　勇者様（ゆうしゃさま）のご飯（はん）を食（た）べる手（て）が　はじめて止（と）まりました

　女（おんな）の子（こ）は少（すこ）し黙（だま）ると　顔（かお）を上（あ）げました

「でも　勇者様（ゆうしゃさま）さまを　助（たす）けることができました

　勇者（ゆうしゃ）さまは　悪（わる）い竜（りゅう）をやっつけることができます

　でも自分（じぶん）のことが　できません。だから、わたしがかわりに　やってあげます」

　女（おんな）の子（こ）はそれから　毎日（まいにち）勇者様（ゆうしゃさま）のところへやってきては　

　かいがいしくお世話（せわ）をしました

　勇者様（ゆうしゃさま）は　だんだん元気（げんき）を取（と）り戻（もど）し、ついに竜退治（りゅうたいじ）に出発（しゅっぱつ）することになりました

「今（いま）までありがとう。おかげで元気（げんき）になったよ

　頑張（がんば）って竜（りゅう）を退治（たいじ）するね」

　勇者様（ゆうしゃさま）が出発（しゅっぱつ）しようとすると

「わたしもついていきます」

　女（おんな）の子（こ）は言（い）いました

「だめだよ、危（あぶ）ないよ」

　勇者様（ゆうしゃさま）は止（と）めました

「危（あぶ）ないことは　分（わ）かっています」

　女（おんな）の子（こ）は答（こた）えました

「でも勇者（ゆうしゃ）さまは　自分（じぶん）のことができません

　お世話係（せわがかり）が必要（ひつよう）です」

　そう言（い）う声（こえ）はすこし震（ふる）えています

「君（きみ）は戦（たたか）いの役（やく）には立（た）たないよ　足手（あしで）まといだよ」

　勇者（ゆうしゃ）さまは怒（おこ）ります

「わかっています！」

　女（おんな）の子（こ）は声（こえ）を荒（あら）げました

「でもお腹（なか）を空（す）かせていたら　竜（りゅう）をやっつけることができません

　独（ひと）りぼっちじゃ　頑張（がんば）れません

　そんな勇者（ゆうしゃ）さまを　わたしは放（ほう）っておけません！

　足手（あしで）まといなら　勇者（ゆうしゃ）さまが助（たす）けてください！

　助（たす）けてくれなくても　無理（むり）やりにでも　ついていきますから！」

　女（おんな）の子（こ）は　目（め）に涙（なみだ）を浮（う）かべながら　言（い）いました

　決意（けつい）は　とても固（かた）いものでした

　とうとう勇者様（ゆうしゃさま）が折（お）れて　二人（ふたり）で旅（たび）をすることになりました

　旅立（たびだ）ちを祝（いわ）って　たくさんの人々（ひとびと）が　見送（みおく）りに来（き）ました

「勇者（ゆうしゃ）さま　がんばって！」

「勇者（ゆうしゃ）さま　たすけて！」

　頼（たよ）る声（こえ）　励（はげ）ます声（こえ）は　

　たくさん聞（き）こえてきました

　中（なか）には　女（おんな）の子（こ）が一緒（いっしょ）にいて大丈夫（だいじょうぶ）かと　心配（しんぱい）する声（こえ）も聞（き）こえましたが

　誰一人（だれひとり）　止（と）める人（ひと）はいませんでした

　女（おんな）の子（こ）は　本当（ほんとう）に足手（あしで）まといでした

　何（なに）しろ　旅（たび）に出（で）るのも初（はじ）めての　箱入（はこい）りむすめです

　怖（こわ）くて立（た）ちすくんだり　転（ころ）んでけがをしたり　崖（がけ）から落（お）ちそうになったり　　　

　動（うご）けなくなって勇者様（ゆうしゃさま）がおぶったり

　けれども勇者様（ゆうしゃさま）は一度（いちど）も怒（おこ）りませんでした

　なぜなら女（おんな）の子（こ）は　ついてきたことを後悔（こうかい）したり

　弱音（よわね）を吐（は）いたり　泣（な）いたりすることは　一度（いちども）も無（な）かったからです

　女（おんな）の子（こ）は　いつも勇者様（ゆうしゃさま）を心配（しんぱい）し、元気（げんき）づけ、ごはんを作（つく）ってくれました

　一人（ひとり）で旅（たび）をするよりも　何倍（なんばい）も　手間（てま）と　時間（じかん）が　かかりましたが

　二人（ふたり）の旅（たび）は　とても楽（たの）しいものでした

　いよいよ竜（りゅう）のもとに辿（たど）り着（つ）いても　女（おんな）の子（こ）は相変（あいか）わらず足手（あしで）まといでしたが

　勇者様（ゆうしゃさま）にとっては心強（こころづよ）く　一生懸命（いっしょうけんんめい）に戦（たたか）って竜（りゅう）を打（う）ち倒（たお）しました

　二人（ふたり）は抱（だ）き合（あ）って喜（よろこ）びました

　それから女（おんな）の子（こ）と勇者様（ゆうしゃさま）は　平和（へいわ）になった世界（せかい）で

　ひっそりと二人（ふたり）で　幸（しあわ）せに暮（く）らしました

　竜（りゅう）が退治（たいじ）され　人々（ひとびと）はたいそう喜（よろこ）びましたが

　勇者様（ゆうしゃさま）は　姿（すがた）を見（み）せませんでした

　そして月日（つきひ）は流（なが）れ　風（かぜ）の勇者様（ゆうしゃさま）は　ただの伝説（でんせつ）になりました

　石碑（せきひ）はすっかり苔（こけ）むして　祈（いの）りを捧（ささ）げる者（もの）はいなくなりました

　精霊（せいれい）さまの加護（かご）を受（う）けた勇者様（ゆうしゃさま）は　年（とし）を取（と）りません

　女（おんな）の子（こ）だけが年（とし）を取（と）り

やがて病（やまい）でなくなってしまいました

　勇者様（ゆうしゃさま）は　悲（かな）しみにくれました。

　毎日（まいにち）お墓参（はかまい）りを欠（か）かさず　女（おんな）の子（こ）のことを想（おも）って　泣（な）いていましたが

　一緒（いっしょ）に暮（く）らした日々（ひび）のおかげで　自分（じぶん）のことができるようになっていて

　前（まえ）のように　髪（かみ）がぼさぼさになることも　部屋（へや）が散（ち）らかることも

　ありませんでした

　女（おんな）の子（こ）を　悲（かな）しませるようなことはしないと

　心（こころ）に決（き）めていたのでした

　あるとき、また黒（くろ）い竜（りゅう）が甦（よみがえ）りました

　勇者様（ゆうしゃさま）は　女（おんな）の子（こ）に励（はげ）ましてもらった思（おも）い出（で）を胸（むね）に

　三度（みたび）　竜（りゅう）退治（たいじ）の旅（たび）に出（で）ました

　今度（こんど）は　さらにつらい旅（たび）になりました

「勇者様（ゆうしゃさま）　がんばって！」

「勇者様（ゆうしゃさま）　おねがい助（たす）けて！」

　ねぎらう声（こえ）　頼（たよ）る声（こえ）は　もっともっと増（ふ）えました

　国（くに）に暮（く）らす人（ひと）が　増（ふ）えていたのです

　声（こえ）が増（ふ）えても　何（なに）かが足（た）りません

　勇者様（ゆうしゃさま）は　本来（ほんらい）の力（ちから）を出（だ）せずにいました

　そこへ　勇者様（ゆうしゃさま）のうわさを聞（き）き付（つ）けた若者（わかもの）たちが

　一緒（いっしょ）に旅（たび）をさせてください　竜（りゅう）退治（たいじ）を手伝（てつだ）わせてくださいと　やってきました

　勇者様（ゆうしゃさま）は　大変（たいへん）うれしく思（おも）いました

　手伝（てつだ）ってくれる人（ひと）が　はじめてあらわれたのです

　若者（わかもの）たちは　そんなに強（つよ）くありませんでした

　やっぱり　ちょっと足手（あしで）まといでした

　でもみんなすぐに仲良（なかよ）くなって　一人（ひとり）で旅（たび）をしていたときより

　ずっと心（こころ）は軽（かる）くなりました

　旅（たび）は大変（たいへん）厳（きび）しいもので　途中（とちゅう）で命（いのち）を落（お）とす者（もの）もいました

　それでも　みんな最後（さいご）まであきらめずに勇者様（ゆうしゃさま）についていき

　力（ちから）を合（あ）わせて竜（りゅう）を退治（たいじ）することができました

　旅（たび）を終（お）えて　勇者様（ゆうしゃさま）は振（ふ）り返（かえ）ります――

　私（わたし）はまた一人（ひとり）になるだろう

　しかし　みんなとの思（おも）い出（で）があるから　孤独（こどく）じゃない

　また黒（くろ）い竜（りゅう）が甦（よみがえ）るかもしれない

　いや　きっと甦（よみがえ）るだろう

　今度（こんど）は　私（わたし）から一緒（いっしょ）に戦（たたか）ってくれる仲間（なかま）を　捜（さが）そうと思（おも）う

　一人（ひとり）では上手（うま）くいかないことが　たくさんある

　みんなでやっても　上手（うま）くいかないこともある

　でも、誰（だれ）かがそばにいて　一緒（いっしょ）に頑張（がんば）ってくれるだけで

　私（わたし）は　何倍（なんばい）も頑張（がんば）れるんだ

　もしかして……　竜（りゅう）も独（ひと）りぼっちで　寂（さみ）しいのかもしれない

　今度（こんど）甦（よみがえ）ったら　竜（りゅう）とも仲良（なかよ）くできないか　考（かんが）えてみるよ

　君（きみ）たちが　私（わたし）にそうしてくれたように　今度（こんど）は私（わたし）から――

　君（きみ）たちが　私（わたし）に勇気（ゆうき）を与（あた）えてくれた

　君（きみ）たちが居（い）なかったら　成（な）し遂（と）げることはできなかった

　ありがとう　本当（ほんとう）の勇者（ゆうしゃ）たち

　みんなのお墓（はか）に向（む）けて　勇者様（ゆうしゃさま）がそう誓（ちか）うと

　柔（やわ）らかな春風（はるかぜ）が　そっと吹（ふ）き抜（ぬ）けていったのでした

　おしまい