第五章 秋水の迷い、コーヒーと共に (昼編) その二
「仔牛の骨?」
焼けた骨を見た直後は人骨だと思っていたが、思えば秋水に人肉食の趣味や嗜好はなかったはずだ。
秋水は鉄板を持っていたミトンの手袋を取って、それまで切っていた野菜を骨の隙間を埋めるように置いていった。
「今度はオーブンの温度を下げて野菜の水分だけを飛ばす。焦がさないように何度かひっくり返す」
ほぼ野菜の山となった鉄板を再び装備したミトンを使いオーブンの中に入れる。
「で、何か大変なことになっているらしいね」
割烹着を脱いで何時もの短パンアロハシャツ姿になった秋水は近くの木製の円形椅子に腰を掛けて聞いた。
その時だ。
「親父ぃ、ただいまぁ」
「あなた、戻ったわ」
部屋の扉が開き、すっかり冬支度した正行と短髪の女性が入ってきた。
「おかえり」
正行たちの手には食材や日用雑貨が入ったエコバックがあった。
「一応、最初の電話の時に二人に石動君が来ることを伝えて買い出しに行ってもらった」
「お久しぶりです、石動さん」
女性が前に出て微笑んだ。
「お久しぶりです……我が社で作ったプログラムは、その後どうですか?」
「今のところ、トラブルみたいなトラブルはありませんよ」
「そうですか……」
秋水は二人のやり取りを、本人は自覚していないが微妙な顔で見ていた。
「まずは、お互いの近況報告をしようや」
思いを断ち切るように秋水は提案した。
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