第四章 ようこそ、お茶会へ(現実編) その六

 普段なら何もかもをすっ飛ばし二人乗り用にしては異常なパワーを持つエンジンが不満げに唸る。


 ここは秋水が指定したマンションの地下駐車場だ。


 スポーツカーが、まるで、街中の軽乗用車の様な使い方をされて不機嫌な唸りを無視するように石動は後ろの荷物入れから家やデパートなどで買った道具を出して小さいバックを持ったナターシャと共に正面玄関に行く。


 石動はドアの前でスマートフォンで呼び出す。


「来ましたよ、おやっさん」


――ああ、石動君か。


――わりぃけど、三階まで来てくれないかな?


――今、ちょいと手が離せない


 ナターシャの耳にも会話が聞こえた。


 夫である石動はナターシャを見て安心させるようにうなずいた。


「お邪魔します」


 そこはモデルルームのようにしゃれた家具や小道具があった。

 ただ、生活感はほぼ皆無だ。


 二階は逆に会社のように事務机が組まれ、パソコンや予定表、ファイルフォルダーを収めた棚などがある。


 それらを石動とナターシャは珍しそうに見る。


「おーい、早く来い」


 上から声がかかる。


 三階に上がると、そこは台所兼食堂の様だった。


 巨大な人がいた。


 平野平秋水。


『伝説になった霧の巨人』と裏社会では恐れられた人物。


 その彼は、玉ねぎを切っていた。


 テーブルには様々な野菜が乗っていた。

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