第四章 ようこそ、お茶会へ(現実編) その四
数回のコール音の後、石動の顔がわずかに明るくなった。
数回の会話をして電話を切った。
ナターシャからすれば内容は分かるような分からないような、断片的なものだったが、どうやら別の場所に行くらしい。
だが、直には行かないようだ。
「ナターシャ、少し時間が出来た。デパートでも行って持ってこれなかった日用品でも買おう」
夫の提案にナターシャは素直にうなずいた。
車は再び唸り、街へ向かった。
賛成はしたが、実はナターシャはデパートなどが苦手だ。
否定はしないが大量生産されたものには抵抗がある。
逆に蚤の市のような人のぬくもりのある場所で売っている伝統工芸のおもちゃや家事道具は魅力的だ。
石動もその性格を知っている。
だから、デパートより少し離れた駐車場に停めて散歩するように街を歩いてデパートに行く。
歯ブラシなどを日用品コーナーで買い出た。
と、外に出てぶらぶら歩いていると小さな喫茶店兼洋菓子屋を見つけた。
何となしに二人は相手の顔を見て頷き、その店へ足を運んだ。
「季節のフルーツタルトとスコーン、紅茶です」
店で注文し、窓際の席に座ると店員が品を持って来た。
「あら」
「おっ」
二人は感嘆した。
美味い。
あまり食には興味を示さない石動も驚いた。
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