プロローグ 2 夢でも会いたい その三
――全てが分かる?
正行は首を傾げた。
「分かるんだよ。まだ解明されていない史跡の始まりから終わりまで、いつ崩壊するのかも見えるし分かるんだ」
春平は苦しそうに唇を噛んだ。
生前、春平は地元・豊原県、とりわけ星ノ宮市の歴史を重点的に調べていた。
どこかで土器が出れば現場に駆け付け、他の研究者と共に写真に撮ったり記録を付けたりしていた。
時には、土器を持ち帰り深夜までブラシで土や埃を払い、拡大鏡で色々調べていた。
本人曰く「その土地の歴史を知ることは、自分自身の祖先を知る事であり、自分を知ることだ」
祖父にとって最初から答えの分かっている問題を出されている気分なのだろう。
正行は、どう答えていいか分からなかった。
その頭を少しだけつま先立ちして春平は撫でた。
「お前って、本当にいいやつだな」
この言葉に孫は首を振った。
「そんなことない。俺は、いつも爺ちゃんや親父、石動さんたちに迷惑をかけている。俺が気が付いていたら、爺ちゃんだって死ぬことは無かった……」
「あのな、俺の癌は進行性のものでお前が真っ先に気が付いたら、天才外科医だぞ?」
それでも、正行は首を振る。
再び泣き始めた。
「俺さえ……」
「じゃあ、今、俺に傘をさしているのは誰だ?」
全てを言い終える前に春平は質問をした。
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