プロローグ 2 夢でも会いたい その四
――今、俺に傘をさしているのは誰だ?
その問いに正行は首をかしげたが祖父の両手は下がっている。
では、誰が?
気が付いた。
いつのまにか、ボロボロの傘で春平を雨粒から守っていた。
さすが、骨むき出しの部分があるが、それは自分のほうに向けている。
雨もいつの間にか静かな小糠雨になっていた。
「正行。お前が子供の頃に教えてた『情けの傘に人が集まる』というのは覚えているか?」
正行は脳の中の記憶を探った。
確かに祖父は、両親から離れて暮らすようになった時から寝物語のように色々な話をした。
本人はならべく幼い正行が分かりやすいように話していたが、正行は外で遊んで眠いのと話の難しさ(人生経験も少ない)にすぐ、寝落ちした。
「忘れた」
正行は素直に祖父に告げた。
春平に顔が苦くなる。
「あのな……」
苦言を呈しようとした顔に何かが目に入った。
「お前、後ろを見てみろ」
「え?」
「いいから早く」
正行はゆっくり後ろを見た。
そこには両親をはじめ自分の知り合いや友達が傘を正行へ差しだしていた。
驚いた。
「これが『情けの傘に人は集まる』ということだ」
祖父である春平は胸を張った。
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