第11話 阻止

「じゃあ、俺はこれで……失礼します」

「はい♡」


 こうして俺は保健室を後にした。

 結局、白石さんはもう少し寝るとのことである。

 

 まじか、まじか、まじか、まじか、まじか、まじか!

 俺、白石さんと付き合っちまった!

 いや、もう白石さんじゃなくてましろでいいよな!


 一人ウキウキとスキップをしながら俺は自分の教室に戻る。


 右手を刺されたし頬も切られた、そんなのもうどうでもいい。

 ましろの可愛さに免じて許す。

 ただ一つ、心配なことがある。

 それは姉さんに見つかってはならないということだ。

  

 まあ、さすがにバレないようにうまくできるだろ。



「何さっきからニヤニヤしてんだよ……気持ちわりいな」と俺を見る真一。

「別に〜」


 現在はお弁当を食べている最中である。


 いつもと同じ物が入っているはずなのに、いつもより何十倍も美味しく感じてしまう。


「んなはずあるか! 俺たち親友なんだぜ、それぐらいわかるわッ!」

「へへ〜そっかあ〜?」と俺は卵焼きを一口サイズにお箸で切ると口に運ぶ。


 姉さんに内緒ということで少し一緒にいる時間が少なくなってしまうのは残念だが、ましろの恋人になれたという事実の方が今は強く、そんなのどうでもいい。


「まあ、いいや。そーいえば白石、まだ保健室なのか」とましろの席を見る真一。

「本当だな……」

「お見舞いに行ったら迷惑かな?」

「は?」

「だーかーら、お見舞いにいこうかなーっと」


 忘れていた。

 そういえばこいつ、ましろに好意を抱いてたんだった。

 かといって、ましろと付き合ったなんて人に知られたら多分姉まで広がるも時間の問題になってしまう。

 うむ、言えないなこれ。


「ガチ?」

「は、ガチに決まってんだろ」


 なんとしてでも阻止しなければだなこれ。

 ごめん、いつかましろとのことは言うから、今許してくれ。


「いや、流石に付き合ってない異性がお見舞いって……重くないか?」

「な〜にが重いんだよ。男からアタックしてナンボよ。お前はいいぜ〜西園寺先輩っつー姉がいるからそんなこと言えるんだろ?」

「ちが──っ」

「くねーよ、んまあ、行ってくるわ保健室によ」と先を立ち上がる真一。


 まずい、真一にこれ以上好意を持たせてしまったらあとあと大変なことになる。


「まっ、待ってくれ」と俺は真一に手を伸ばす。

「んだよ〜昼休み、終わっちまうだろ」


 くそ、真一のやつめ行く気満々だな。

 

「んでなんだよ?」


 どうすれば真一が保健室に行くのを阻止できるんだ。

 ……お、思いつかない。

 む、無理だなこれ。


「いや、なんでもない」

「そうか。んじゃあ、行ってくるな!」と教室を出て行く真一。


 やってしまった、ごめん真一。


 心の中で謝った。


 本当にいつか、真一に言える日は来るのだろうか。

 俺とましろの恋愛は表向きでできる日が来るのだろうか。

 なんとしてでも姉さんを説得するしか方法はないなこれ。


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