第10話 しゅきっ♡

 これでいいんだ。


「ほほほ、本当ですか──!」とベッドから上半身を上げて俺の両手を掴む白石さん。


「はい、ずっと好きでした」

「しゅきしゅきしゅきしゅきしゅきしゅきしゅきしゅき♡」とそのまま俺に抱きつく白石さん。


 え、何その顔……めちゃくちゃ可愛いんですけど。


 ぐいぐいと俺の頬にすりすりと頬をつける白石さん。


 ああ、これは夢なのか。

 夢だ。

 うん、夢に違いないだろう。 

 なんせ俺が白石さんと付き合えたのだぞ。


「優くん、大しゅきですっ!」と幸せそうな顔をしている白石さん。


 もう、夢なら夢でいいや。

 もし夢なのなら頼むからこのまま冷めないでほしい。

 この天国の時間がずっと続いてほしい。


「ずっと心配だったんです、優くんに彼女が出来てしまったら生きる目的がなくなるって」


 やはり、白石さんからの愛が少し重い気がする。

 俺に傷をつけるだけではなく自分も同じところに傷をつけるということもするのだ。


 袖を捲る白石さん。


「え……」


 腕には無数の線が入っていた。

 この傷の名前を俺は知っている。


「優くんが女の子と話すたびにその女の子を殺そうとしてしまうんです♡。ですのでその気持ちを抑えるために自分に傷をつけているんです♡」


 ──リストカットというやつだ。


「痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて、仕方がなかったんです。だから、これ以上、優くんは女の子と話すのを控えてほしいですっ♡。お姉様は例外ですけどねっ」


 ニコニコとそう言う白石さんに俺は恐怖を抱く。


 "重い"そんな一言では表せられないほど彼女は俺を愛している。

 正直引くレベルだ。

 でも、白石さんと付き合えるなんてこんな機会を愛されすぎているからという理由で逃すわけにはいかない。

 いや、愛されてすぎるのに問題なんてないだろ。


「そうですっ、優くん?」

「?」


 白石さんは舌を出し、指を舐めまわし唾液を伸ばしながら。


「一つ提案があるのですが、これからその……毎日私とキスしてください♡」


 そんな彼女を見ているとアソコが反応してしまっていることに気づき、俺は下腹部に手をやり隠す。


 男なのだ、それも思春期の。

 こればかりは仕方がないことである。


「大きくなってるんですねっ♡。嬉しいですっ、私で興奮していて」と俺の下腹部をマジマジと見ている。


 どうやらばれているらしい。

 まあ、いきなり下腹部に手をやったのだ、バレるに決まっている。


「私も優くんで興奮してるんですよ? やっぱり、私と優くんは似てるんですねっ」


 似ていない、そう否定がしたかった。

 でも否定なんてしたら白石さんが俺を嫌ってしまうかもしれない。

 だから言えなかった。


「うん……」

「じゃあ、今からキスしましょっ」

「うん……」


 すると、白石さんは目を瞑る。


「優くんからお願いします♡」


 俺からのキスを待っているようである。


 本当にこれは夢じゃないんだよな。


「はい」と俺は白石さんの唇に唇を近づける。


 くそ、心臓がうるさい。

 止まれ、止まれ、止まれ。


 ぷにっと唇に感触がした。

 白石さんの舌が口の中に入ってくる。

 だから、俺も舌を動かして白石さんの舌に絡めた。


 キスを終え、白石さんを見ると。


「私たち、悪い子ですね」

「全くですね……」



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