第7話 私たちお揃いだね♡

 次の日──。


 自分の教室に着くとすでに白石さんは席に座っていた。

 目が合うと白石さんはウインクを決め、俺はニヤけてしまった。


 朝から白石さんにウインクされてしまった……。

 本当に俺のこと好きなんだよな。


 未だに信じられない。

 ただ一つだけわかることがある。

 それは白石さんはとんでもないほどの独占欲の持ち主であるということだ。


 席に着き、スクールバッグから家に持ち帰った教科書を取り出し机の中に入れようとするとなにやら紙の感触がした。


 ん……なんだこれ。


 机の中から取り出してみると。


 まじか、ラブレター!?


 ハートのシールで封をされていた一枚の手紙だった。

 表面には綺麗な字で『優くんへ』と書かれていた。


 一体誰からだろうか。


 俺、もしかしてモテ期きてるのかこれ。


 そんなワクワクした気持ちで綺麗にハートのシールを外し一枚の字の書かれた手紙を見る。



『優くんへ。


  今日の放課後に屋上に来てください。

  昨日のようにお姉様に遭遇したくないので慎重に来てください。


                ましろより。』



 なるほど、白石さんからか。

 ちょうどいい機会である、俺も昨日、屋上で何を言おうとしていたのか聞きたくてムズムズしていたし聞くとしよう。 


 姉にトークアプリで。


『ごめん、少し用事があるから帰り今日も遅れる』


 と、送るとすぐに既読がつき。


『わかったよ(^∇^)!』



 放課後──。


 俺は放課後になったと同時に自分の席を立ち上がり、スクールバッグを手に持つとすぐさまに屋上へと向かう。


 この時間ならまだ姉さんと遭遇することはないだろう。

 姉さんも異常だ、あまり白石さんと合わせるわけにはいかない。


 当然だが俺の方が早く教室を出たわけだしまだ白石さんはいないと思っていた。


 けれど、すでに白石さんはベンチに座り待っていた。


 はや……。


 俺に気づくと白石さんはニコリと微笑み。


「こっちに来てください」と空いたスペースをトントンと叩く。


 と、隣に座るだと。


 あまり女の子と話さない俺にとって女の子の隣に座るのは緊張するものだ。

 ましてや学年一の可愛い女の子ときたら。


 ドキドキと心臓がうるさい中、俺は白石さんの隣に座った。


 うわっ、甘くフルーツのいい匂いがする。


 白石さんは足をぶらぶらとしながら。


「遅いですよ〜全く」

「す、すみません……」

「嘘嘘っ♪。私が早いだけですから心配しなくて大丈夫ですよっ」


 はあ……昨日、あんなに傷つけられておいてもなんとも思わないなんて。

 むしろ、俺のことが好きだということがわかって気持ちがいい。


「ちょっと、昨日傷つけちゃった方の手。包帯をとって見せてもらってもいいかな?」


 生涯傷が残りそうな気がする。


「う、うん……」


 一体何をするのだろうか。

 また舐めてくれるとか!?

 

 俺は包帯を取り右手を白石さんに向けると。

 

 まじまじと見る白石さん。


「うんうん、よしっ。その位置ね……」


 右手から目を離し、自分の右手の甲を見る。


 次の瞬間、白石さんはポケットからカッターナイフを手に持ち、自身の右手の甲に向かって突き刺した。


「え……」


 突然の出来事にボソリと声を出す。


 ビシャリと血が右手から垂れ、地面に垂れる。


「いったあ〜い。けど、これでやっとお揃いの物ができたよ……」


 何してるんだ……この人は。


 予想外の出来事に声が出ない、身体がピクリとも動かない。


 そして、右手の甲を俺に見せつけて白石さんは笑顔で言った。


「お揃いだね、私たち♡」と。

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