第2話

 友人達と別れ、家路につく間、ずっとおばあちゃんの家のことが気になって頭から離れずにいた。あと数時間後にはあの気味の悪い場所に行くのだと思うと気分が暗くなる。

 気乗りのしない予定は憂鬱ゆううつで、嫌と言えず断れない自分にも嫌気がさす。やっぱり行くのやめようと言おうかな。そう思い何度もスマホを見つめ、断りのLINEを入れるか迷う。

 断って仲間外れにするような人達でもないのも分かっていた。けれど、こういったイベントを共有できなくなることと、それを自ら断ったということになれば、私と友人達との間に少し距離ができてしまうのは確かだ。

 みんなが集まっている時に「あの時、誘ったのに来なかったよね」と友人の誰かが責めるわけでもなく何の気なしに言われるだけでしょんぼりしてしまうだろうし、みんなが楽しそうに話している横でいたたまれないでいる自分を想像すると、行くのをやめると言い出せなくなった。


 私に霊感と呼ばれるようなものは全く無い。なのに、あの日だけは何故だか嫌な予感がした。遠くからしか見たことのない、あの鬱蒼うっそうとした雑木林にたたずむおばあちゃんの家を思い浮かべるだけで心の中が毛羽立けばだち胸騒ぎがしたのだ。


 家に着いて「ただいま」と言うと母が「元気無いね、どうしたの?」と聞いてきた。私は母のこういう鋭さを知っていたから、気付かれないようにいつもより元気に言ったつもりなのに。私は「何でもない」と返すと母は「そう?」とだけ言ってまた夕飯の準備を始める。

「今日は晩御飯いらないから」

「えっ、何で?」

「友達と食べに行くからいらない」

「そうなの?あんまり遅くまで出歩いてちゃダメだからね」

「分かってるって」

「10時までには帰ってきなさいよ」

「はいはい」

 私は母から逃げるように自分の部屋へ行き、制服から私服に着替えて家を出た。


 季節は冬から春に変わりだいぶ暖かくなったとはいえ夜はまだ肌寒い。私は春の夜のりんとした空気が好きだ。間近に迫った春休みのワクワク感だってあった。今日の肝試しが終われば思い出話にだってできるはず。

 私は私自身を励まし、舗装されていない凸凹でこぼこした田舎道を歩きながら、集合場所であるおばあちゃんの家の近くにあるバス停へと向かった。

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