第39話 法外都市ラルム6
今回はよく眠れた。
最近は変な夢続きでうんざりしていた。
部屋は2階にある。
レインの魔法で部屋が増設されていた。
何でもありだな、魔法は。
いや、レインは。
そういえば魔法には詠唱が必要のはずだ。
しかしレインは詠唱もなしに魔法を使っていた。
接近戦では魔法を使う暇がない為、私は魔法を基本的に使わない。
一応初級魔法は一通り使える。
もし無詠唱で使えるようになるのであれば、魔法を採用するのもありだな。
今日聞いてみよう。
下に降りる。
まだ誰も起きていないみたいだ。
とりあえず椅子に座る。
現在の時刻は0700。
本当は言うとこの街を観光したいが、早くニーナを助けてやりたい。
待て、ここから元の場所へと戻れるのだろうか。
レインの話によると、魔女狩りが来たら座標が変わると言っていた。
つまり今外に出ても別のどこかと繋がっている?
それはまずいことになった。
レインに言って座標を元の場所に戻してもらうか。
いや、座標をいきなりニーナのいるであろう場所にしてもらうのもありだ。
「おはようございます。レイク様」
フォーリンが寝ぼけ眼で2階から降りてきた。
「おはよう、フォーリン。何だか眠そうだな」
「あーはい。その昨日エルメールさんがちょっと……」
「そのエルメールは?」
「まだベットで寝てます。起こすのも申し訳なかったので」
「そうか、私はちょっと出かける。1時間で戻る」
「わかりました。お気をつけて」
ーーー
昨日の夜
空間魔法ってこんなこともできるんですね。
レイン様の魔法で2階に新たに部屋ができました。
部屋の中はベットしかないシンプルな部屋ですが、そのベットもふかふかで気持ちいいです。
はあ、ここにいたら一瞬で寝てしまいそうです〜。
私が微睡まどろみに浸っていると、私の上に誰かが乗ってきました。
もしかしてレイク様!?
……いや、背中に伝わるこの柔らかい感触はエルメールさんです。
「フォーリンちゃん! 一緒に寝よ!」
「別に大丈夫ですが……」
「何? レイク様じゃなくて残念と?」
「そそそんなこと思ってません!」
……ちょっとしか。
レイク様と添い寝……
いやでもあの時のことを思い出してしまいます。
本当にあの時はどうかしていました。
私ちょっとえっちなのかもしれません。
「お耳赤いよ?」
「からかわないでください!」
「あはは、フォーリンちゃん可愛いなー。レイク君もフォーリンちゃんのこと好きだと思うけどねー」
「そんなことありえません」
「そうかなー? そういえばフォーリンちゃんって何歳なの?」
「15歳です」
「へぇ! 私と5歳も離れてる。いいなぁ若いって青春だねー」
「エルメールさんも若いじゃないですか」
「まあねー。ちなみにお婆さま何歳だと思う?」
レイン様……
見た目的に20〜30代のような風貌をしていますが、実際は何歳なのでしょうか?
魔女は悪魔と契約することによって寿命が延びると聞いたことはありますが、100歳なんてことはないでしょう。
「50歳くらいでしょうか?」
「うっわー酷い! そこはちゃんと20歳って言わないとお婆さまに怒られるんだぞー。ま、正解は私もわからないんだけどね」
「酷いです! 騙されました!」
「勝手に引っかかっただけじゃん、もう!可愛いなぁ」
そう言って私を抱きしめてきます。
強く強く抱きしめています。
ですが苦しくはなく、むしろ心地が良いです。
「エルメールさん……?」
エルメールさんから返事がありません。
この一瞬で寝てしまったのでしょうか?
「フォーリンちゃん、このままこの街にいよ?」
「……駄目です。お姉様を助けに行かないといけません」
「そっか……」
「すみません」
それからエルメールさんはそのまま寝てしまいました。
私もエルメールさんの寝息を聞きながら眠りに落ちました。
ーーー
私はエルメールと出会った入口へと向かった。
今は朝早い為か外には誰もいない。
昨日はあまりよく街の様子を見てはいなかったが、この街はランス王国並みに発展している。
家の壁はレンガでできたものが大半を占めており、だいたいが2階建て以上だ。
道にゴミ一つなく、その点はランス王国よりも優れている。
そういえばこの街の長は一体誰なんだろうか。
ラルムアーズが作った街だが、そのラルムアーズは既に死んでいる。
長がいない国など存在しない。
長がいなければこの街は破綻しているだろう。
レインは仕切るタイプには見えない。
他の魔女が長をやっているのだろう。
そうこう考えていると目的の場所に着いた。
街の外の景色は普通の道が続いている。
私達がここに来た時と何一つ変わらない。
試しに外に出てみる。
しかし気づいた時には街の前に立っていた。
訳がわからない。
座標を変えるだけであったなら、外に出ればそこの座標に出るはずだ。
しかし今私は街の前にいる。
再度外に出てみる。
しかし結果は変わらなかった。
つまりここから自力で出ることはできないということか?
ではどうするか。
レインに聞くしかないみたいだな。
ーーー
家に戻るとフォーリンとエルメールが料理を作っていた。
とても香ばしい匂いがする。
「あ、おかえりなさい。あとちょっとでできるのでお席に座って待っててください」
「あぁわかった」
フォーリンとエルメールはあーだこーだ言いながら朝食を作っている。
大丈夫か?
そうして運ばれてきたのは、パンとサラダ、目玉焼き、そして黒いスープだ。
パンとサラダと目玉焼きは特に異常性はない。
しかしこのスープは何だ?
匂いは大丈夫だ。
しかし色が黒く、何か浮いている。
その遺物をスプーンで掬ってみたが、本当に何なのかわからない。
「このスープは何だ?」
「大丈夫だから食ってみてよ! フォーリンちゃんが丹精込めて作ったんだから!」
フォーリンが作ったのか?
何か変なものを入れるやつではないはずだ。
「変なものが入ってたら承知しないからな」
意を決して口にする。
味は……普通だ。
不味くはない。
こんな見た目だが塩味のある普通のスープだ。
遺物も口にする。
コリコリとした食感で味は無い。
エルメール、どうしてこちらを見ている?
何かを企んでいる顔だ。
まさかこれは何か変なものなのではないか?
フォーリンも様子がおかしい。
こちらを見ては目を逸らすを繰り返している。
私は急いで口の中のものを吐き出した。
「これは何だ!?」
「あー! それ手に入れるの大変だったんだからね! 弁償! またはちゃんと食べてあげて!」
「フォーリン、これは何だ?」
エルメールに聞いても誤魔化されるだろう。
フォーリンなら答える筈だ。
「私は止めました。これは、その、キノコです。」
「何のキノコだ?」
「さあ、私にはわからないです。」
そう言ってわかりやすく目を逸らしている。
フォーリンは恐ろしく嘘が下手くそだ。
このキノコは何かやばい作用がありそうだ。
作ってくれて申し訳ないがスープは飲まないでサラダとパンと目玉焼きを食べて朝食を終えた。
そういえばレインはまだいない。
絵にも入ってない。
どこかに出かけているのだろうか?
「ただいま」
レインのことを考えていたら丁度レインが戻ってきた。
「おや、これは惚れキノコじゃないかい。こんなものどこで手に入れたんだい?」
ほれキノコ?
聞いたことのないキノコだな。
「以前襲ってきた魔女狩りのバックの中に入ってたんだー」
「そうかい、これは強力な神経毒が入っていて、食べた者を……」
「わあーーーーーー!!!!!」
フォーリンが急に叫び始めた。
てか待て、神経毒って言ったか?
「おいエルメール、私に何を食わせようとしたか話してくれるよな?」
「いや、えーっと聞かない方がフォーリンの為っていうか、なんというか」
「いやーー!!」
フォーリンがとても慌てている。
仕方ない、結局食べていないし深掘りするのはよそう。
「そういえばお婆さま、昨日の夜からどこに行ってたの?」
「あぁ、ちょっと昨日の魔女狩りが気になってね。あの男が身に着けていた服、あれはトリス王国のもんだ」
「それがどうしたんだ?」
「あぁトリス王国の近衛騎士団団長、カレン・アミュレート・ブレイズクローはあの5色の魔法使い本人だ。その手下が来たということは今回は本気だ。おそらく他にも来ている」
カレン・アミュレート・ブレイズクロー。
彼女は6傑の第2席に座している勇者だ。
彼女が世界にもたらした功績は多く、彼女の開発した魔法は1000を超える。
テレポートが世間に広まったのも彼女のおかげだ。
その二席がまさか伝記の人物だったとは。
「今回は私だけでは厳しい。少年も手伝え」
しょうがない。
寝床を分けてくれた恩だ。
そして本物の勇者と戦うチャンスでもある。
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