第37話 法外都市ラルム4
「キャー!」
数十メートル先から悲鳴が聞こえました。
何があったのでしょうか?
とりあえず行かなくては……
「エルメールさ……」
悲鳴が聞こえたと思ったらエルメールさんが既に私の10メートル以上先にいます。
いつの間に移動したのでしょうか?
高速で移動したのでしょうか?
いや、だとしたら突風が吹き荒れて気づくでしょう。
もしかしてテレポート?
空間魔法が使えると仰っていましたが、まさかテレポートまで使えるとは驚きです。
私も追いかけなくては。
3分くらい走ったでしょうか。
ようやくエルメールさんのところへ追いつきました。
ですが、そこには理解のし難い空間が広がっていました。
空中に火の玉が沢山あり、エルメールさんと対峙している男は動きが止まっています。
止まっているというより固定されてると言った方が正確かもしれません。
どういう魔法原理でとどめているのか気になります。
ってそうじゃなくて、この現場を理解しなくては。
男の服装は綺麗な装飾が施されていて、戦闘には向いてなさそうな感じがします。
まるで、自分は強いでしょってアピールしているみたいに。
よく見ると、男の付近に血を流したオークが倒れています。
もしかして、いやこの男がやったのでしょうか。
いや、この男でしょう。
エルメールさんはというと、怒りの表情を浮かべ、男を睨みつけています。
「おい女! 俺様に何をした!?」
男も、怒りの顔を浮かべ、エルメールさんを睨みつけています。
「死ね」
エルメールさんがそう言うと、止まっていた火の玉達がが男の目の前に迫り、寸前で止まりました。
どうしたのでしょうか?
「おいどうした当ててみろよ!」
男は炎を当てろと言っています。
あの数、当たれば致命傷は免れないはずなのに。
あの服に何かがある?
エルメールさんはそれに気づき寸前で止めた?
エルメールさんは火の玉を消し、男に近づきました。
そして、その小さな拳を男の顔にぶつけました。
しかし、その鋭さはエルメールさんのような体からは想像できないほどの威力を秘めていました。
おそらく、魔力強化でしょう。
手に、小さな魔力障壁を作る技です。
しかし男はびくともしていません。
そして拳を入れたエルメールさんの方が顔から血を出し倒れました。
「ひゃひゃひゃひゃ! ざまあみろ。これが俺のスキル、反射だ」
「エルメールさん!!」
私は咄嗟にエルメールさんのところへ出ました。
「なんだお前、女の仲間か?」
男が私に向かって剣を振りかぶってきました。
それを私は魔力障壁で塞ぎ、エルメールさんの怪我を治療しました。
無事傷は癒えたものの、脳震盪を起こしているのか目が覚めません。
どうしようかと迷っていると、私の魔力障壁が割れてしまいました。
かなり魔力をためたはずなのに……
まさか本当に勇者?
やばい、斬られる……
え、死ぬの?
こんなところで?
私何も、成し遂げてない……
レイク様……
覚悟を決め目をつむりましたが、訪れるはずの死がやってきません。
ゆっくり目を開けると、刃は首元で止められました。
「魔女がどこにいるか知らねえか?」
「え……あ、魔女? き、聞いたことありませんね」
「そうか。その女は置いていけ」
「い、嫌だと言ったら?」
「痛っ」
鎖骨のラインを薄く切られました。
痛いです。
「ったくら面倒くせえな! 次は首を刎ねるぞ」
駄目だ。
言っては駄目だ。
ですが、男の目は本気の目をしています。
言わなかったら本当に殺されてしまうのがわかります。
「さん」
男は数を数え始めました。
やばいです。
言わないと……
「にぃ」
「ま、魔女はこっちの方向にいます!」
そう言って私は男の体の向きとは反対側を指差しました。
その隙に逃げなくては。
私はその僅かな隙にエルメールさんをつれて全身全霊を込めて走り始めました。
ですがそううまくいかず、背中を切られてしまいました。
ギリギリ致命傷には至らない傷ですが、ものすごく痛いです。
そのまま倒れてしまいました。
あ、今度こそ死ぬ。
剣先を倒れているこちらに向けて突き刺そうとする男を見て、そう確信しました。
男は思い切り私に向かって突き刺そうとしていましたが、寸前で止まりました。
「てめぇもか! ふざけた技を使いやがって!!」
何が……って
エルメールさんが寸前のところで止めたみたいです。
あ〜怖かった〜。
少し漏らしちゃったかもしれない……
男はまた動きが止められて怒っています。
「はあはあ、ごめん、どれくらい気を失ってた?」
「えと、1分くらいです」
「そっかありがとね。今は一旦逃げるよ」
「はい!」
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