第29話 ラーレン領4


「どうでしたか?」


 領主が開閉一口そう聞いてきた。


「あぁ無事悪魔は払った」


「「「おー!!」」」


「今日は宴会じゃ!」


「「「おー!!」」」


 元気な領民だ。

 しかし宴会か……そんなことより私は早く寝たい。

 しかしフォーリンは宴会と聞いてワクワクしている。

 しょうがない付き合ってやるか。



ーーー



 領主が宴会と言った瞬間、領民はすぐに準備をし、宴会が始まった。

 場所は何故かあの滝のある場所だ。


 私は領民から離れたところで果実のジュースを飲んでいる。

 フォーリンはと言うと、もてはやされてはしゃいでいる。

 まあ、最後のとどめをしたのはフォーリンだし文句はないのだが、私のところに誰も来ないとはどういうことだ?

 そう思っていると見たことのある男女がやってきた。


「レイク様、今回はありがとうございました」


「君たちは確かあの時の」


 そこには、領民の中では一際若い男女がいた。


「はい、実は私たち子供が出来なくて困ってたんです。レイク様のおかげで救われました」


「この領地は僕たちが生まれ育った所で思いれがあって本当は出たくはなかったのですが、おかげで子供ができてもここで過ごせそうです」


「そうか。では願いを聞いてくれるか?」


「なんなりとお申し付けてください!」


「実は今日泊まるところを探していたんだ。泊まらせてくれないか?」


「そんなことでしたら喜んで!」



ーーー



 宴会も落ち着き、私はフォーリンを捕まえた。

 フォーリンは何故かフラフラしている。

 もしや酒でも飲んだか?


「おい、お前酒を飲んだのか?」


「はい、ちょっとだけ」


 どうして進んで毒を体内に入れたがるのだろうか。

 特に、フォーリンのようなまだ成熟していない人にはまだ早いだろう。


「まあいい、歩けるか?」


「歩けません。連れてってください」


「わかった。俺のところまでこれたら連れて行ってやる」


 そう言うとフォーリンはこちらまで歩いてきた。


「よし、歩けるな。行くぞ」


「ちょっと! 今のはずるいですよ! おんぶでいいので連れて行ってください!」


「そのおんぶが嫌なんだよ!」


「そんな! 私は自分で言うのも何ですが美少女ですよ! おんぶできるなんてご褒美なんじゃないですか?」


 こいつ、先程年寄りにもてはやされて舞い上がってやがる。

 その勘違いを正してやる。


 私は無言で後ろを向き、フォーリンを置いて出て行った。


「すみません! 調子に乗りました! 置いてかないでください!」


 そうしてフォーリンに袖を掴まれながら、先程の男女の家へと向かった。


「いらっしゃいませ。お風呂は沸いております。是非お入りください」


「すまない。こいつを先にベットに置きたいんだが、どのベットを使えばいい?」


「あ、あちらの部屋をお使いください。僕のベットですけど、今日は妻の部屋で寝るので」


「わかった。ほらいくぞ」


 フォーリンをベットに投げ入れ、私は風呂に入るとする。

 明日の早朝からここを出る。


 風呂は小さいながら身体が浄化される気分だ。

 昔は風呂でゆっくりする時間が無駄だと思ってシャワーで済ませていたが、最近は風呂でゆっくり考える時間が好きだ。


 おそらくエイニの影響だろう。

 エイニがこの身体を使っているときは毎日30分近く風呂に入っていた。

 そういえばエイニは本当に消えてしまったのだろうか?

 呼びかけても何も返答がない。

 まあいいか。


 風呂を上がり、フォーリンに入るよう催促しようと思ったが、フォーリンはすっかり寝ているようだ。

 寝ている姿はとても可愛い。

 駄目だ、何を考えている。

 可愛いのは認めるが、やはり女は大人しいのが好みだ。

 こんなうるさいやつ……


「何私の寝顔を見つめてるんですか?」


「!?!?!?」


「ふふっ、見惚れてたんですね。しょうがないことです」


「違う、ただ……」


「ただ?」


「黙れ! さっさと風呂に入れ!」


「わかりましたー」


 そう言ってフォーリンは風呂の方へ向かった。

 くそっ私としたことがフォーリンに手玉に取られるなんて。


 待て、ベットが一つしかない。

 このままではフォーリンと寝ることになる。

 それはまずい。

 今のあいつのことだから何か起こしてしまうかもしれない。


 いや、先に寝てしまおう。

 そうすればわたしから何かをしでかすことなど起きない。


 そう思いベットに入る。

 今は体も温まっており、すぐに眠れそうなのになぜか眠れない。

 そして20分くらいしてフォーリンが再びやってきた。


「あれ? 寝ちゃいました?」


 無視だ。

 寝たふりをしろ。


 フォーリンは何を思ったか、私の頬を指で突いてくる。

 やめろ、鬱陶しい。

 続けて髪を撫でてきた。


「やっぱり男の人って髪の毛ガサガサなんだ〜」


 やめろ、くすぐったい。

 こいつまだ酔いが覚めてないのか?

 発光石の光が消える。

 そして、フォーリンもベットに入ってくる。

 背中にかすかに感じる温もり。

 無理にでも意識してしまう。

 鼓動がうるさい。

 気づかれてなければいいのだが。


 30分くらい経っただろうか。

 隣の部屋で何か聞こえる。


「ん……あ……」


 小さな女性の声。

 そしてギシギシと鳴る何か。

 これはもしかしてあれか?

 だが、私たちが隣の部屋にいるのにあれをするか?

 普通考えてしないだろう。


「隣に聞こえちゃうよ……」

「大丈夫。寝てることは確認したから」


 いや、聞こえているぞ。

 これで確信した。

 これは間違いなくあれをしている。

 寝たいが嫌でも気になってしまう。

 隣にフォーリンがいるので余計考えてしまう。


 フォーリンがベットから出た。

 どこに行くのだろうか。

 もしかして止めようとしているのだろうか。

 それは配慮がなっていない。

 あちらが常識外れなのはその通りだが、行為中に突入するのはもっと常識外れだろう。

 まあいい。

 フォーリンが止めようが止めなかろうが私は寝る。



「ぁんダメ、ん……」


 駄目だ寝れない!

 嫌でも局部が盛り上がってくる。

 フォーリンは何をしているのだろうか。

 ベットを出てから戻ってきていない。

 そう思っていると、噂のフォーリンが再びベットに戻ってきた。

 何をしてきたんだ? トイレか?


「レイク様、起きてますか?」


 起きているなんて言えるわけないだろう!


「寝ていますね……」


 そう言うと、フォーリンが身体を密着させて、手を前に回してきた。

 やめろ、今はやめろ。

 フォーリンの慎ましいながらに柔らかい胸が当たっている。

 胸だけではない。

 足を絡ませている。

 こいつ、当分お酒は禁止にされなければ。

 私は咄嗟に寝返りをうった。


「す、すぴー。すぴー」


 フォーリンはというと下手な寝息を立てている。

 これで冷静になっただろう。

 再び寝返りをすると不自然だと思ったので、このままの姿勢のまま寝ることにする。

 幸い、真っ暗でフォーリンの顔は見えない。


「寝てますよね……?」


 起きてるわ!

 この女まだ続けるつもりか?

 やめてくれ、ようやく局部もおさまってきたというのに。

 フォーリンは今度は私の手を取って、自身の背中に回した。

 先程の状態の逆の形だ。

 フォーリンが私の胸に顔をうずめてくる。

 髪からいい匂いがする。

 

 まあでも、今日はフォーリンの手柄なのは間違いない。

 今日くらい許してやろう。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る