約束

電車の中で自分を言い聞かせた。もう悲しくなって泣かないように。

日花は一年前去ってしまった。この事実は二ヶ月前から段々と受け入れられるようになった。もっと同じ時を歩みたかった。そんな願いももう叶わないのだから。最期に日花約束をしてきた。

「私の一周忌の日になったらどこか出掛けて。私もついて行くから。」

もう死期が近づいていたからだろうか。何かを悟ったようにこれまで見た笑顔になっていた。そんな顔をしていたから僕はつられて顔が綻んだ。そして約束をした。だからいまここに来ていた。

「大好きだったよ。」

そう告げて墓に場違いな華美な花を添えた。こんな事は僕が一番よく分かっていた。けれども日花はこの花が好きだったから。気がつけばまた涙が慕っていた。本来ならば今日も会えていたはずなのに。もし願いが何でも叶うのならば最後に日花と一度でもいいから話したい。そんな叶わぬ事をボソッと言ってしまった。内心叶うはずもないのだから苦笑いしてしまっていた。

「…健司。」

ついに現実を受け入れなくなって幻聴まで生み出してしまったのだろうか。でも後ろを向いてみた。

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