約束
電車の中で自分を言い聞かせた。もう悲しくなって泣かないように。
日花は一年前去ってしまった。この事実は二ヶ月前から段々と受け入れられるようになった。もっと同じ時を歩みたかった。そんな願いももう叶わないのだから。最期に日花約束をしてきた。
「私の一周忌の日になったらどこか出掛けて。私もついて行くから。」
もう死期が近づいていたからだろうか。何かを悟ったようにこれまで見た笑顔になっていた。そんな顔をしていたから僕はつられて顔が綻んだ。そして約束をした。だからいまここに来ていた。
「大好きだったよ。」
そう告げて墓に場違いな華美な花を添えた。こんな事は僕が一番よく分かっていた。けれども日花はこの花が好きだったから。気がつけばまた涙が慕っていた。本来ならば今日も会えていたはずなのに。もし願いが何でも叶うのならば最後に日花と一度でもいいから話したい。そんな叶わぬ事をボソッと言ってしまった。内心叶うはずもないのだから苦笑いしてしまっていた。
「…健司。」
ついに現実を受け入れなくなって幻聴まで生み出してしまったのだろうか。でも後ろを向いてみた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます