勢力解説:帝国

 アルティピア帝国は名実ともに作中世界最大最強の超大国です。

その軍隊は帝国の衰退が進みつつある今なお最強のものであると断言できます。帝国”軍には”欠点はありません。

ほぼ全ての種類の兵科が運用可能であり、上位ユニットの質は全てにおいて最高です。

特に、たびたび他の勢力の解説でも触れられている最上位の重騎兵、カタフラクトは今作中最強の戦闘ユニットであり、文字通り一騎当千の存在です。

下位ユニットであっても、平凡な士気にさえ目をつぶれば他勢力における同クラスのユニットに対し装備面で優位に立ちます。

どのような状況下においても、多くの戦術的選択を取ることができます。もちろん、部隊が展開できていれば、という留保はつきますが。

”体勢を整えた”帝国軍は100回戦えば99回勝つことができるでしょう。

 しかし、彼らが歴史から「去り行く運命」にあるのもまた事実です。

はたして実働部隊の奮闘で得られる99回の戦勝は、統治構造の破綻から迎えることになるひとつの敗戦の損失を補うに足りるのでしょうか。


 元老院による寡頭制が敷かれた人間の勢力「共和政キューゴ」と、魔人クーに連なる魔族の「クールサ大王国」の結合によって生まれた、アルティピア大同盟がその前身となっています。

同盟はやがて人族である「至高帝」灰色のガイウスの皇帝即位により帝国と化し、以後歯止めのない膨張を続けました。

 帝国は共和政時代より名高い人間の戦闘部隊「軍団」の旗のもと、北のツンドラから南方の砂漠まで、およそアルティピアの民が観念しうる世界の全てを征服しました。

市民法秩序による市民の平等な扱いを約束する統治政策は、当時被征服地の上流層から受け入れられ、同化を基調とする支配は作中現在も続いています。

 しかし帝国が絶大な力をもって世界を征服し誰もが帝権に平伏した時代も、そして多くの者が文明の中心たる帝国に憧れを抱き帝国を見上げていた時代も、今となっては遠い昔のことです。

我々の世界の史実における全ての大帝国が迎えたのと同じように、アルティピア帝国もまた避けがたい衰退の中にあります。


 作中現在の帝国が抱える問題は多種多様で、原因もまた複合的な要素から成っており、解決することは容易ではありません。

例えば、財政緊縮の要請から公的サービスの市民への提供はもはやほとんどなされていません。

世界最強の軍隊である帝国軍もまた予算面の問題から装備維持や人員充足に難を抱えています。

他にも、流行り病や長く続く経済低迷等の影響により、中流層の大規模な没落が生じています。

そこから生じた著しい貧富の格差は、市民法秩序により覆い隠されていたはずの「帝国人」と「他種族出身者」間の埋めることの叶わぬ構造的断絶を明らかにし始めています。

治安面でも天帝軍南進に伴う「内地」での帝国正規軍の敗北を境にして、領内の各地で反乱と暴動が渦を巻いています。

その敗北でニオシア半島の大金山が失われたことから、貨幣金含有率の下落とそれに伴う経済混乱が生じており、凄まじいインフレが民衆を襲っています。

「帝国市民」間の連帯は間違いなく損なわれており、そして帝国の指導者たちもまた共通の大義を失いつつあります。

極めつけに、そんな状況下で今上の「人間の皇帝」は魔族出身の妻と幼い娘たちを残して、後継者指名のないまま病床での昏睡状態にあります。


 アルティピア帝国は崩壊へと向かっているのです。

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